Web人賞

皆川 卓也

ジェイマジック株式会社 ラボ兼技術開発部 シニアマネージャー

顔ちぇき!の開発


「顔ちぇき!」の先にある、「見たまま検索」でSF的な世界を目指す

携帯写真からどの有名人に似ているか教えてくれるサービス「顔ちぇき!~誰に似てる?~」は、わずか半年間で7,000万人を超えるユーザーが利用する2007年を代表する大ヒットサービスとなった。画像認識技術を応用して「顔ちぇき!」の開発をほぼ1人で行ったのが、皆川卓也氏である。

――「顔ちぇき!」のサービスをはじめられたきっかけは?

元々ジェイマジックという会社が設立当初からやりたかったのが、「見たまま検索」という、画像をキーにして検索するサービスでした。その要素技術のひとつに顔認識技術というのがあって、これを使って何かできないかな? と考えていたんです。そこで、携帯で顔認識するデモを作って、お客さんと雑談していた中で、「似てる有名人がわかるといいよね」というアイデアが出てきて、それならできると。デモを作ってみたら評判がよかったんです。
この過程で、インターフェイスやユーザーエクスペリエンスの学習ができたこともあり、自社サイトもやってみようと思ってα版をつくりました。
α版はプレスリリースもなく、自社のサイトからリンクを張ったくらいです。それでもユーザーが徐々に増えて、ひょっとしたらいけるんじゃない? という感触があったので、β版を公開しました。そうしたら一気に広まって、四苦八苦しながら今に至ります。

――携帯向けのサービスにした理由は?

「見たまま検索」をどう実現するかを考えたときに、携帯にはカメラは付いているし、GPSは付いているし、要はセンサーの塊なので、デバイスとして最適なんですよ。しかも、日常的にパーソナルなものとして持ち運んでいて、これほど検索に適したものはない。「顔ちぇき!」をはじめるときも自然な流れで携帯向けになりました。

――携帯のWebサービスの経験はおありだったんでしょうか?

バックグラウンドがITのシステム開発なので、モバイル系に特化したサイトは作ったことがありませんでした。最初はデモなので、携帯3キャリア用にサイトを特に分けず、XHTMLでサイトを作れば一度に3キャリア対応できるよね、くらいの認識でしかなかったんです。ところが、意外とキャリアごとのクセがあったので、後々3キャリア固有のものにしたわけですが、はじめはリソースも無いのでどれだけ効率的に作るかというのを意識していました。

――しばらくは1人で開発されていたんでしょうか?

技術としては私1人です。β版にするときにサーバ構築を外部の人にお願いしましたが。プログラムも立ち上げまでは1人でやりましたね。それ以降は人に任せて、自分は画像認識の開発を続けています。

――「顔ちぇき!」のその後の展開は?

ドラマとタイアップした「ドラマちぇき!」、映画「バイオハザードIII」とタイアップして、カンヌ国際広告祭でショートリストに入賞した「ゾンビちぇき!」、ビートクルセイダースとタイアップした「ビークルお面ちぇき!」など、顔をキーにした企画をいろいろやっています。

――今後の目標は?

やはり、見たまま検索を実現したいと思っていて、そのために「SAYL(セイル)」のデザインコンセプトやアーキテクチャに関わっています。SAYLというのは、いろんな検索エンジンを統合して、見たまま検索を実現しようとするコンセプトのプラットフォームで、基本的には「顔ちぇき!」もほかのメディアもこの上に乗っかっているという形です。元々ジェイマジックがやりたかったのがこちらなんですが、「顔ちぇき!」の方が有名になってしまいました(笑)。

――見たまま検索というのは具体的にはどういうものなんでしょうか?

例えば、花を携帯でかざしたら、花の情報がぱっと出てくる。ビルをかざしたら「あ、今日はあのビルで会議がある」ってわかる。そんな、SF的な世界観を目指しています。WILLCOM 03に画像検索アプリとして「Magic Loupe」というツールをプリインストールさせていただいているんですが、それが「見たまま検索」のコンセプトを体現しています。検索対象となるのは、本とCD、DVDのみですが、これらを「Magic Loupe」でかざすことで、商品検索やWikipedia検索ができるというものです。

――QRコードの発展みたいなものでしょうか?

QRコードは結局それ用のコードを印刷しないといけないんですが、見たまま検索は、印刷物のデザインをそのままに検索対象にして、DBに登録してあるものであれば検索できる。見たまま検索の入り口、という感じですね。

――見たまま検索は実現しそうなんでしょうか?

「Magic Loupe」で一部は実現していると言えるんですが、この対象をあらゆるものに広げるには、徐々に徐々にで、一足飛びでは行けないですね。いろんな要素技術を吸収していく必要があります。

――画像認識技術に惹かれた背景は?

画像認識技術の目標は人間の視覚システムに追いつくことです。そのため脳の研究成果が応用されることが多いのですが、僕は特にこの点に強い関心があります。
昔からネットワークの持つ力にはすごく興味があったんですが、脳もネットワークの集まりだし、インターネットもそうだし、生態系もそう、人間の体もそう。何か統制しているものがないのに、自立的に動いている、ということに興奮を覚えてしまうんです。
だから自然とインターネットというものに非常に惹かれたのかもしれません。インターネットが出てきたときの思想って、誰にでも開放されていて、すごくフラットで、統制する人もいない世界ですから。

インターネットの中で、新しい人を繋ぐようなものを作りたいと最初は思っていたんですが、入った会社が外資系で、日本法人は販売拠点でしかなかったため、自分の好きなサービスが作れなかった。そんなときに画像認識に出会って、これを使えば、僕がやりたかった新しいサービスが作れる。そこで使われているテクノロジー「パターン認識」がインターネットと相性がいいんじゃないかと思ったんです。
人間が認識するというのがどういうことかというと、ただの光からパターンを抽出する。同じように、インターネットもいろんなセンサーが繋がっているので、その中から意味を抽出する手法がパターン認識から持って来られないか、というのを夢想して、取り組み続けています。

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