Web人 of the year

上路 健介

株式会社IBC岩手放送テレビ編成局メディア企画部主事

kikeruツールバーほか


地方放送局の目線で、通信と放送を「近づける」サービスを提供

インターネットユーザーにとって便利なツールは次々と登場するが、そのターゲットは一部のコアな層。しかし地方放送局にいながら、ネットになじみの薄い人々にも使ってもらえるようなサービス、システム作りを進めているのが、上路健介氏だ。

――ウェブの世界に足を踏み入れた経緯をお聞かせください。

 はじめはネットとは関係ない、いちテレビマンでした。しかし、入社前からバンドを組み、音楽に携わっていて、ウェブでの配信も行っていたんですね。上司にそれがバレて「インターネットや地上波デジタルをからめて、何か面白いことをやってみろ」と指令を受けて。当時はまだテレビ業界はネットに対して強い抵抗感を抱いていた時代だったし、岩手でのネットの普及率も低かった。そこであえて、マスメディアとインターネットの距離を近づけていこうと考えました。その過程で生まれたのが、国税庁からの依頼で小中学生に税金の仕組みを教えるRPG的なFlashコンテンツだったり、アナログ放送の時代に携帯電話から番組に参加できるシステムだったり、RSSの規格が日本ではほとんど認知されていなかった頃にXMLで同様のシステムを活用してツールバーを作ったりといった仕事です。
 またテレビでの配信後、数十分でネット向けに編集した動画が配信できるシステムも作りました。素材となる動画ファイルをCMSと連動して自動的にFLV、ストリーミング、携帯電話、ビデオポッドキャストなどのデータに変換して公開するんですよ。現在記事自体の公開は報道部が担当しているのですが、動画の編集はパートのおばちゃんに頼んだりしていますね(笑)。このシステムは外販もしています。

――ブラウザのツールバーについてお聞かせください。

 リリースしたのはまだGoogleなどのツールバーしかなかった時代です。放送局では全国で初めてだったと思います。報道や気象のシステムをカスタマイズして自動的にニュース配信を行うツールバーで、デザインや配置をリアルタイムに変更できるため、一般のユーザーさんに大きなインパクトを与えることができました。
 最近はラジオを聞けるツールバー「kikeruツールバー」を開発しました。現在ラジオ業界はインターネットにシフトしている真っ只中ですが、ユーザー側の視点に立つと、各ラジオ局のウェブページにアクセスして再生ボタンをクリックするという作業が面倒に感じます。ならば選局システムをブラウザのツールバーに搭載させ、プリセットされたチャンネルを切り替えられるようにしたら便利だろうと考え、開発しました。

――RSS、XMLも含め、自動化に拘られているように感じます。

 狙いは省力化でもあります。多くの人員をさけませんし、作業はできるかぎりオートメーションしようと。必要にせまられて開発した部分はありますね。

――最近作られたシステムについて教えてください。

 話題連動型広告配信をはじめました。これは様々なサイトが行っているワードランキングのデータを収集して、それらの総合ランキングをつけ、上位10ワードに関連する商品広告をアマゾンのデータベースから呼び出す仕組みです。いわゆるワードランキングサイトはいくつかありますが、それぞれの結果に意外と違いがあるんです。それらを総合してランキングをつけることで、より客観的なリアルタイムのトレンドがわかるはずです。この結果にマッチした広告を配信できるシステムです。トレンドにマッチしているものだと広告も情報に見えるのでしょう、一般のページマッチング広告よりもクリック成果は7倍にもなりました。

――ターゲットとしている層はありますか?

 日本の総人口のうち、99.1%がテレビの視聴者です。約1億2000万人ですね。そのうちインターネットユーザー数は約8000万人。インターネットの最先端技術を使った便利なサービス・ツールは、1000万人ほどのアクティブなユーザー、またはさらに少ないなギーク・ネットサービス企業向けに作られていることが多いのですが、僕はそれをよしとは思わないんです。ユーザー層が濃く、狭くなっていくだけですし。僕はインターネットの普及率が全国で27番目という岩手で仕事をしていることもあり、もっと幅広く、もっと裾野の人に使ってもらえるように、簡単に使えるインターフェースを持ったサービスを提供したいと考えています。

――開発の環境や、社内のメンバー数を教えてください。

 2005年までは基本的に1人でやってきました。基本的に新しいもの好きなので、「お、これは何だろう?」と興味を持つ新しい技術を見つけたら、まず仕組みを調べます。1~2週間ほどで作り方や使い方をマスターして、その中から普通の人が使いこなしてもらえそうなハードルの低いものをリリースしてきました。去年やっとメディア企画部という組織ができまして、今は社員としては4人、さらにプログラムを組むスタッフが2人になりました。

――今後手がけていきたいサービスはありますか。

 CGMのワードランキングトップ10を見ると、テレビ番組が発端、上流となっているキーワードが8~9つほど入っていることに気がつきました。もっと詳しく見ていくと、たとえばトレンディドラマの放送後2時間にわたって、感想などを書くブロガーや、それを探しているユーザーが多い。その後はぱったりと途絶えてほかのキーワードが上位に並ぶのですが、CGMとテレビに密接な関係があることには違いないのです。しかし現在、テレビの制作サイドはそれを回収できていないんですね。ゆえに反響なども含めテレビに戻すツールが作りたいと、切実に考えています。ポイントは時間軸になると思うのですけどね。

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