Web人賞

藤崎 実

株式会社読売広告社 クリエイティブ局 シニアクリエイティブディレクター

極魔界村バイラルCM


大反響を持って迎えられたバイラルCMの仕掛け人

 「これはアマチュアが作ったもの?」「いやいや完成度が高すぎじゃないか?」と話題が話題を呼び、まさにバイラル効果を増幅させることに成功した極魔界村のネットCM。「従来のウェブを絡めたCMは手あかがついている気がした」と言う読売広告社のシニアクリエイティブディレクター、藤崎氏が手がけたもので、その結果は人々に認知されていく様子がリアルタイムに見られる、生きたマーケティングになったという。

――極魔界村のネットCMはどのような経緯で生まれたのですか?

 1985年にリリースされた魔界村をはじめ、同シリーズは“伝説の高難易度ゲーム”という評価で現在でもコアなファンに愛されています。その歴史を顧みて、最新作である極魔界村は当時中高生だった30代ユーザーへのアピールをメインにするべきだと考えました。かといってこの世代となると普通のゲーム雑誌はほとんど読まなくなっているので、セグメント化されてしまう雑誌に広告を出したとしても反響が少ないだろう、と感じたんですよ。
 30代にとって接触率の高いメディアはインターネットです。そしてネット上で動画を見るという行為も一般的になっていました。それなら普通のブログに貼り付けられるタグを用意したバイラルCMは効果的なのでは?と考えたんです。

――バイラルCMに注目したきっかけを教えてください

 新しいことに挑戦したい、今までにない広告を作りたいと常々考えていまして。そして2005年6月に、カンヌ国際広告祭に行かせてもらえることになりました。日本にいながらでも上位の受賞作品を知ることはできますが、現地に行って驚いたのは、本当にすばらしい作品が揃っていたんですよ。すごく影響を受けましたね。特にサイバー部門(インターネット部門)にノミネートされた作品を見て、「ウェブの中だけで完結できる広告もできるんじゃないか?」と思うようになりました。
 そして8月ごろ、ロナウジーニョが出演したナイキのCMを見ました。海外のサイトでは「この映像はホンモノか?」で大きく盛り上がり、バイラルCMの効果を確認したんですよね。フォルムの美しいこの広告を日本でもやりたい、そう思ったんです。

――バイラルCMに対するクライアントの反応はいかがでしたか?

 説得するのに時間がかかりました(笑)。ネットでの動画広告で、本当に商品の認知度が上がっていくのか、話題が広まっていくのかという疑問が強かったようで、何度もクライアントに通いました。サンプルビデオを作ってからプレゼンしたりと。
 実は、最初は雑誌広告の依頼だったのです。そこでバイラルCMのA案と、普通の雑誌広告のB案を持っていき、「それでもA案のほうがいい」「早い者勝ちなのでぜひやったほうがいい」と強くプッシュ。最終的には「雑誌広告と同じ予算、たとえば50万円でできますよ!」とまで言い切りました。

――製作時のお話を聞かせてください

 海外のバイラルCMを見ると、いわゆる“ダマテン”的なものが多く見受けられますが、僕たちは著作権も肖像権も、すべての権利を犯さないリーガルな作品にするという意思がありました。また視聴者がムービーを見たときに“ツッコミ”ができるような、バズを意識した内容にするという目的もありました。その上でプロデューサー自らがダンボールで工作をするような、まるで学芸会のノリで取り組みました。広告のプロが結集して、限られた予算の中でムービーを作る。むしろ予算という制限があったからこそ、「効果音はどうする?」「自分達の声でいいじゃん」といったアイディアが生まれていきました。

――公開後は「これはなんだ!?」と大反響となりましたが。

 事前にシーディングをしていたのですが、公開後は頻繁にテクノラティで反響を調べましたよ。それも10分おきに(笑)。ブログや巨大掲示板から話題が広がっていく様子が伺えましたね。それに視聴者の生の声も聞けました。生きたマーケティングができましたね。
 バイラルCMですから、誰が作ったのかわからない謎めいたところも含めて構築する必要がありました。評価も含めて、一切合財を一般の視聴者にまかせるという気概も重要でした。自作自演はしたくないですからね。その成果もあったのでしょう。

――公開後の業務はどうでしたか

 クライアントは自分たちの広告なのだということを早く明らかにしたくて、逆に「いつウチのサイトで明らかにしていいんだ」とプッシュされましたね。そこで定期的にネットで集めた反響をまとめ、分析したレポートを提出していきました。クライアントサイトでの露出は公開してから約2週間後でしたが、本当のところもうちょっと粘りたかったですね(笑)。

――今後の、インターネット広告の展開はどう考えていますか?

 CDを知ってしまった現在、レコードに戻れません。でも最後の最後で、デジタルはアナログには勝てない、というのが僕の持論です。だからこそ、デジタルをどう使いこなすかを意識しています。ネットが日常的なものになり、情報はどんどんオープンなものとなり多数のユーザー間で共有されてきていますから、ウェブ出身のクリエイターとは違う発想力で、みんなの心を動かして分かち合える有機的なコンテンツを作っていきたいですね。

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