第10回 Webクリエーション・アウォード

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過去の受賞者をたずねて

第6回受賞者 佐々木 英彦氏Web人大賞

トヨタ自動車株式会社
e-TOYOTA部 インターネット企画室 サイト企画グループ長
トヨタ自動車サイト ほか

※社名・肩書き等は受賞当時のものとなります。

受賞直後のインタビューはこちら

チーム全体が、会社全体のため、お客様のためという視点を共有することが大事

複雑なトヨタ全体のWebサイトを円滑に運営する手腕が高く評価され、Web人大賞を受賞したのが、e-TOYOTA部の佐々木英彦氏だ。受賞後、氏の仕事や企画に変化はあったのか、また、Webの仕事に取り組む姿勢などを、改めて伺った。

――Web人大賞受賞後、ご自身の心境や周辺に何か変化はありましたか?特に変わったことはありませんが、会社や業界の垣根を越えていろいろな方と知り合う機会が増えたことはありがたいですね。たまたま知り合った人が、仕事上のヒントとなるいいことを言ってくれたりすることもありますし、直接そういったことがなくても気分転換になります。私は、人と人とのつながりはものすごく大事なものだと思っています。
――一番神経を使うこと、大変なことは、各部署の説得・調整だとおっしゃっていましたが、そのことに変化はありますか?

社内での折衝や、外部のプロジェクトメンバーとのミーティング等で、これまでのやりとりが実を結んで、知り合った担当者がこちらの仕事を手伝ってくれたりするようになりました。私たちがサポートすれば、相手も応えてくれる、ギブアンドテイクの関係性がようやくできてきたように思います。e-TOYOTA部配属になった当時は、企画担当社員が私1人という環境でしたが、今ではグループ員が10人に増え、彼らも苦労しながらようやく自発的に仕事をするようになってくれています。

Web担当の部署が他部署と協同する上での苦労は、目の前にある仕事はどの部署の担当か、あるいは誰の担当か、ということがあいまいであることです。技術的なことは「わからないからそっちでやって」、コンテンツに関しては「ウチはこうしたいからこうやっておいて」と、一方通行になりがちです。そこを、全社的な利益、お客様目線という観点で話し合いを重ねることによって、私たちのWeb担当部署としての持ち場・役割を確保している状態です。

――e-TOYOTA部に9年間在籍しているとのことですが、大賞を受賞するまでになる道のりは大変だったようですね。

最初は窓口の仕事は私1人で、あと1人は派遣社員の方と、子会社とでチームを組んでいました。会社の担当としては私1人だけでしたが、仲間がいたからここまでやってこられました。結局1人では何もできませんので、チームのみんなと目的を共有して、よいものを作りたいという熱意を持ち続けていくことが大事だということを痛感しています。「toyota.jp」は、2001年当時はその構造が迷路のようになっていました。私はそれを解きほぐしたり離したりと整理してきたのですが、それなりに思い描いていた形になってきたかなと思えるようになったのが、2005年頃のことです。当時はドメイン分離の意図なんて、だれも理解してくれませんでした(笑)。さらに、現在トヨタ自動車は「toyota.jp」、「toyota.co.jp」、「lexus.jp」、「gazoo.com」など、事業やブランドごとに構成された合計16のWebサイトを運営していますが、それは当社の都合でそうしているわけです。そこでそれを、お客様個々人のニッチな要望に応えるために、一括機能やマイページで技術的な補完をしようと「etoyota.net」を開発しました。これは道半ばで、定着するにはまだ時間がかかると思っています。

――社内折衝も大変ですが、開発側とコンテンツ製作の側とはかなり立ち位置が違うと思います。同じところにゴールをもっていくために、どんな工夫をされましたか?

一般に、実際に開発する現場のメンバーは、なぜそのようにするのかという趣旨をなかなか理解してくれていません。理解してもらうためには自分が具体的な絵を描いてみせるなど、やれることはやってみせるしかない。それだけではどんどん大変になるので、趣旨を理解し、それができるメンバーを見つけては企画を手伝ってもらいました。その上で「お客様はこういうことをやると喜ぶんじゃない? 面白いでしょ?」と開発担当の人たちと話し、こちら側の意図を理解してもらえるように巻き込んでいきました。

しかし、大きなプロジェクトは少人数ではできません。とはいえ、大人数が同じ情報を共有するのは大変むずかしいことです。いいものを作りたいと思って努力したり、お客様のほうを向いて考えたり、さらに社内の事情を理解してうまくたちまわりながら企画を手伝ってくれる人というのは大変貴重で、こうした人がコアメンバーになってくれたのでうまくいったと思っています。現在の関係者はもちろんですが、初期に手伝ってくれていた方々は現在の礎を築いてくれたわけで、大変感謝しています。

――仕事をする上で、これまでの経歴、あるいは趣味で役に立っていることはありますか?

人に何かを伝えるのが好きで、小学校の頃から新聞をつくっていました。大学に入ってもつくっていたので、友人はてっきりそうした方向に進むと思っていたようですが、ものづくりも大好きなので当社に入りました。入社時に広報部を希望し、約9年間在籍しました。広報部では、マスコミにこちら側の意図することをなかなか思うように取り上げてもらえないもどかしさも感じていました。そこで、Webを知った当初は、世界中の人にストレートに意図を伝えることができるツールができたと、非常に興奮したのを覚えています。また、広報部では、自分の会社を客観的に見るクセがついたと思います。

自分や自分の部署だけの利益を超えて、「お客様の利益=会社の利益」「トヨタ全社としての利益になるかどうか」という考え方が身につきましたね。私の趣味ですが、仕事と区別がついていません(笑)。元々コンピュータが好きだったこともあり、サーバを借りていろいろなシステムを試したりしています。今は忙しすぎてできないのですが、自分でつくったコミュニティサイトを、大きなプロジェクトの情報共有の場として提供したこともあります。楽しんでやっていますので、ストレスにはならないですよ。

――佐々木さんの、仕事に対する心構えや信条を教えてください。

楽しく仕事をしたことが、会社のために、そしてお客様のためになればいいな、と思っています。今現在の私たちの目標は、お客様とWebを通じて直接触れ合えるものを作りたい、ということです。その一つの形として、メタポリスという3Dの仮想都市を作り、お客様主催のイベントなども行う場を作り、そこでお客様の直接の声を聞くことを始めています。メタポリス以外にも、個々のお客様のニーズをなるべく満たせるように、意見をちゃんと吸い上げて、経営に生かせるような、企業とお客様がより密接になれるものを作りたいと考えています。とはいえ、お客様の意見を取り入れるだけでは企業側の理論と相容れないことも多々ありますので、大変難しいことだとは感じています。しかし、どんな仕事でもそうですが、抜け道は必ずあります。理想を現実にする努力は怠らないようにしたいと思っています。