2013 Webグランプリ

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第2回受賞者

Web人特別賞

ギョーム・ブランシャー

wikipedia日本語版利用者(編集者)

wikipedia日本語版


ボランティアの記事投稿で成り立つオープンな「百科事典」

多くの人が結集すれば、信頼できる「知識の書庫」になる

誰でも1つや2つは専門的で深い知識を持っているはずだ。多くの人の深い知識を結集すれば、百科事典に匹敵する「知識の書庫」にできるのではないか。ウィキペディアは、個人の知識をオープン思想で集約したオンライン百科事典である。ウィキペディアは世界各国の約150の言語に対応、項目数は100万件を上回るという。日本語版が立ち上がったのは2002年、今では世界で3番目の記事数を誇る規模に成長している。

―― Wikipedia(ウィキペディア)を立ち上げた経緯は?

インターネット上には、個人の知識がウェブページという形で集積されています。ひょっとしたら、ウェブページ上の知識の総数は百科事典をはるかに上回るものかもしれません。しかし、個々のウェブページはドメインがバラバラ、統一された書式でもありません。
Wiki(ウィキ)というシステムを使って、個人の知識を体系的に集約するサービスがあったら素晴らしいだろう。ウィキペディアの創始者とも言えるジンボ・ウェールズが思いたち、最初のウィキペディアのサービスを作りました。
こうして、個人の知識を集積した百科事典「ウィキペディア」が生まれました。ウィキペディアは、誰もが自由に項目を編集したり追加したりできるようになっています。設立の資金はジンボ氏の経営していた会社が寄付しました。現在の運営母体は「ウィキメディア財団」に移っています。
なお、現在のウィキペディアは、Wikiをメディア向けに改良したシステムを使っています。
ウィキペディアの日本語対応は、システムの変更がきっかけでした。2002年に、ウィキペディアの基本ソフトが変わりました。対応する文字コードを拡張して、ユニコードの処理が可能になったんですね。ギヨーム・ブランシャー氏とブライオン・ヴィバー氏が担当したのですが、2人とも日本語に興味があったため「日本語版ウィキペディア」を作りました。
ユーザの活発な活動のおかげで、日本語版はもっとも記事の成長率が高いウィキペディアになっています。

―― 日本語版の記事の編集はどのように行われているのでしょうか?

基本的に、ボランティアの記事投稿で成り立っています。これは日本語版に限らず、世界中のウィキペディアでも同じです。
辞典として役立つためには「Natural Point Of View」、客観視した記事が必要です。このため、「熱意のある分野ではなく、よく知っている分野を書く」ことを勧めています。好きな分野を客観的に書くのは難しいことですよね。まず、よく知っている分野のうち、すでにある記事を修正することから始めるようにガイドラインを作っています。
記事の著作権にも気を配っています。記事の投稿時に「他者の著作物をコピーするのは違法行為」と警告を表示するようにしています。
現在は、各国のボランティアの記事で構成されていますが、機械翻訳の精度が上がれば、各国のコンテンツを流通させられるようになるでしょう。

―― ウィキペディアのエピソードを教えてください。

2003年の冬に、増加するトラフィックに対応するため、サーバを大幅に増強しました。このときに寄付を募ったのですが、予想以上に多くの寄付を頂きました。3日間で予定の3倍ぐらいの寄付が集まってしまいました。寄付してくださった方は、「こんな面白いプロジェクトを、少々の寄付で維持できるなら安いもの」とコメントしてくれています。
ウィキペディアは、編集をオープンにしているため、いわゆる「荒らし」やイタズラに遭うこともあります。記事の内容をメチャクチャにする分かりやすい荒らしから、年表を1年ずらすものまで、さまざまな被害があります。これに対しては、編集履歴が残るシステムを採用して対処しています。荒らしと見られる人物による変更を、一括して元に戻す機能も用意しています。

―― ウィキペディアの課題はなんでしょうか?

ウィキペディアが真に「百科事典」となるには、記事数のバラツキを抑える必要があります。非常に厚いコンテンツと、そうでないものの格差が非常に大きい。また、記事の質をブラッシュアップして行く必要もあります。
記事数のばらつきを抑えるため、「最低限作る1000項目の記事ガイドライン」を作りました。これをクリアしたら1万項目に増やす予定です。
ほかにも問題があります。ウィキペディアはコンピュータを前提にした百科事典です。このため、アイヌ語のような少数民族の言語など、コンピュータで扱いにくい言語を記録するのに向いていません。また、ユニコード化するときに収録されなかった文字も多数あります。
日本語版の問題は、英語に弱い人が多いことでしょうか。ウィキペディアは世界的に展開しているため、共通語は英語になっています。英語ができる特定の日本語スタッフに負荷が集中する傾向があります。
記事だけでなく写真の投稿も募集していますが、これもいくつかの問題が出ています。ウィキペディアの取っている著作権に対するスタンスと、商業著作物のスタンスの違いがあります。ウィキペディア上の写真は自由に使って良いことになっていますが、写真の一部に写っているライセンスのあるキャラクターを拡大して使ったらどうなるでしょう。
これらの問題をひとつづつ解決しながら質の高い項目数を増やして、信頼される百科事典を目指して行きたいです。ウィキペディアは誰でも自由に参加できる、オープンな百科事典です。皆さんの知識をウィキペディアに分けてください。