Web人賞

猪子 寿之

チームラボ株式会社 代表取締役社長

SAGOOLほか


テクノロジーとクリエイティビティで、世界に「日本ヤバイ」と言わせたい

人の主観・興味を反映したオモロ検索エンジン「サグール」をはじめ、動画連続再生サイト「サグールテレビ」など、ユニークかつ革新的なサービスを提供し続けるエンジニア集団チームラボ。その若きトップであり、象徴的存在であるのが、社長の猪子寿之氏である。

――チームラボを起業されたきっかけを教えて下さい

 1996年に大学へ入る直前くらいにインターネットを知って、すごいインパクトを受けたんですよ。何の権限もない、どんな人でも世界中に情報を発信できるのがすごいな、と。既存のメディアは、一部の権力者が情報を垂れ流す構造で嫌いだったんです。10年以上テレビも持っていなかったくらい。その後、インターネットで社会全体が情報化社会になるという風潮になってきたわけですが、テクノロジーや技術で世界に情報発信していくみたいな、そういう会社が日本にないと思ったんです。日本はエンジニアがものを作って成り立っていた国なのに、情報化社会になってそれができないと、経済が滅ぶというか、日本が滅ぶと。

――ものすごい大局的ですね

 電波系なんですよ(笑) 昔のホンダとか、ソニーとか、今の任天堂みたいに世界に発信して、「ジャパンヤバイ」って世界中の人にいわれるようなものを出し続ける会社を作りたい。前の産業で日本の技術は世界に結構勝ってたのに、案外短命に終わってしまった。文化をちゃんと発信できていれば、技術が負けても付加価値が付いていればもっと続いていたんじゃないかと思っています。例えば、ハーレー(ダヴィッドソン)っておんぼろじゃないですか。それでも売れるのはハリウッドがあるから。文化が発信できているからだと思うんです。最終的には自分たちの文化、日本の文化をバックグラウンドにして、技術で再構築するような会社になれればいいと思っています。テクノロジーとクリエイティブだけで勝負していく、それが情報化社会では重要だと思うんです。

――在学中に起業された理由は?

 単純にお金がなくて、稼ぐ自信もなかったので。在学中なら稼げなくてもいいし、大学院が終わるまでに稼げるようになればいいかな、と思ったからです。出資とか受けたくなったし、上場もしたくなかった。この考えは今でも変わりません。

――Web制作会社としてスタートされましたが

 当初はWeb制作がやりたかったわけではないんです。インターネットで使える、コアな技術をちゃんと開発していきたいと思っていました。コアな技術って何だろう、と考えたとき、サーチとかレコメンデーションのエンジンだと思ったんです。情報化社会って一言で言うと、情報があり得ないくらい増える社会ですよね。それから、社会自体が多様化していく。マスコミニュケーションという、1つの価値を世界中で追おうとする構造が、情報化社会だと、情報が超多様化し、大量の情報をどう扱うのが重要になります。ここでコアとなる技術が、サーチやレコメンデーションエンジンだと考えたわけです。サーチはお金がかかるので、レコメンデーションエンジンを作ってパッケージを売ればいいと思って創業時に作ったんですよ。

――レコメンデーションエンジンは、順調に売れたんでしょうか?

 売れないというか、売る相手がわからなかった、という感じです。全員エンジニアだし、「大人」の知り合いもいないし、飛び込み営業とか、怖いし。かといってオフィスを借りなきゃってことで、しょうがないからWeb作りをはじめたんです。
 でも実際にWebを作り始めると、楽しい。直接頼まれたものを作るのは超楽しいので、まあこれでいいかな、と。レコメンデーションエンジンは、「大人」の知り合いが増えて、社会にちょっと知られるようになったら売れ始めました。まあ、パッケージは売れてなかったけど、大企業のWebを作ったときに、勝手に入れたりもしていました。

――2005年に独自のサーチエンジン「サグール」のサービスを開始しました

 以前は日本にもサーチエンジンのプレイヤーがたくさんいたのに、気がついたらなくなっていました。サーチエンジンってメディアそのものだし、情報化社会の技術の根源で、あらゆるソフトウェアはサーチエンジンなしでは成り立たなくなる。あらゆるWebも成り立たない。つまり、あらゆるソフトで日本は競争力がなくなってしまうわけです。こういう危機感から、やらなきゃと思いました。Googleに勝てるわけはないですけど、こんな小さい会社でもやれたら、みんなまたやり出すんじゃないかな、と思って。勝つとか負けるとかなら、やらない方がいいかもしれないけど、検索も本来は多様で、いろんなものがあったほうがいい。ページランク以外のアルゴリズムをやりたかったんです。

――不動産情報検索サイト「いえーい」について教えて下さい

 一言で言えば不動産物件の賃貸・売買情報サービスです。日本全国の不動産情報を、ポータルサイトから小さい不動産屋さんまでクロールして、何の情報を持っているか知的に判断し、不動産情報があるときだけ取得して、ページの中の情報の塊から、マンション名や、家賃や、敷金などの要素を確率モデル判断し、正規化してDBに入れています。そうすると物件数が圧倒的に多くなるので、今まで見えなかった情報、場所による利回りの情報とか、よく似た物件、近隣の生活情報もすぐ表示されるようになるんです。

――「サグールテレビ」について教えて下さい

 サグールテレビは、今年発表したので、いまのチームラボが一番わかりやすいかも知れません。今までインターネットのものって、具体的に何か知りたいことがあって、検索して知って終わるって感じだったと思うんです。もっと、前のめりでものを探すのとは違った、ダラダラと使うようなインターネットのアプリケーションをやってみようと考えたんです。

――「3次元水墨動画」や「au design project」など、アート作品も積極的に取り組んでいますね

 (アート作品は)今はWebとは直結しないけども、融合してくると思ってやっています。すべてはデジタルメディアにかわっていくし、すべての裏側はインターネットになっていく。何がWebかとかって、いずれ区別がなくなる。「HTMLだけがWebでしょ」っていう人は1996年にはいたかも知れないけど、2008年にはいなくなっていますよね。これはWebとは関係ないですねってのは、2012年くらいにはなくなるような気がしています。

――現在の興味と将来の目標を教えてください

 iPodがインターネットに繋がって違う価値になったように、ITとクリエイティブでモノを違う価値にするというのがテーマだったんですが、最近ではそれにロボットテクノロジーも加わっています。ロボットテクノロジーって産業としてのアウトプットは少ないんですけど、日本だけ圧倒的に進んでいるんですよ。好きだから。今後、空間とかモノがオンライン化されたとき、次の付加価値としてロボットテクノロジーがすごい重要になってくると思っています。
 目標と言う点では、まだ世界の人に「日本ヤバイ」って言わせていない。起業当初から目指していた目標に対してゼロみたいものです。世界中の空気として「日本にはもうヒントはない」、と思われていると感じています。やはりこれを払拭したい。日本に世界の未来があるって思わせたいですね。

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