Web人賞

篠原 稔和

ソシオメディア株式会社 代表取締役

ユーザインタフェース関連活動


ユーザインターフェイスを良くすることで、ITを“ソーシャルなメディア”にしたい

アプリケーションやWebサイトのユーザーインターフェイスのコンサルティング業務をメインに行っているソシオメディア社を経営する篠原氏。ソシオメディア社は、ユーザビリティや情報アーキテクチャという観点から、ユーザーインターフェイスのデザイン評価を行っている数少ない会社。現在幅広く活躍している篠原氏はイベントの開催や雑誌の発行などにも力を注いでいる。

――ソシオメディア社を設立したきっかけは?

90年代半ばに、アップル社のWebサイトをローカライズして運営する会社に携わったことがきっかけで、インターネットの世界に入りました。そのときに、大規模なWebサイトを作るというノウハウを学ぶことができたんです。その頃、Webマーケティングと大規模Webサイト構築のためのノウハウという、この2つをやらなければいけないという思いが強くなりました。Web系の書籍の日本語訳などをさせていただいていた中で感じたのは、Webマーケティングについては、誰かが必ずやるだろうということでした。実際に、97、98年頃には、企業がWebマーケティングに目を付けていました。そこで私は、大規模サイトの構築という方面に力を入れることにしました。中でも、ユーザーがWebサイトに対してどんな風に反応して、それがどうデザインに反映されるのかということがとても大事だと気が付きました。また、Webサイトのコンテンツの情報整理ということもかなり重要なことだと思い、ユーザビリティと情報デザインを柱にした会社として、このソシオメディア社を起業したのです。

――現在ソシオメディア社でやっているお仕事はどんなものですか?

大きく分類すると3つの柱があります。ひとつめが個別企業様へのコンサルテーションです。Webデザインの評価を皮切りに、Webアプリケーションや情報システム、業務アプリケーションの画面設計の評価・アドバイスやプロトタイプ設計・開発業務を行っています。2つめが、ソフトビジネスです。高齢者や障害者、さまざまな機器向けに、既存のWebサイトをボタンひとつでアクセシブルなサイトに変換できるといったソフトを開発・販売しております。最後が、メディア活動です。本の翻訳をやらせていただく関係で、原著者の方に会ったりする機会があるので、その著者を招聘することから始まったイベントの主催もしています。有用な知識を少しでも多くの人と共有したいという思いから始めました。それが「DESIGN IT! Conference」というイベントで、年に1回開催という方針で活動しています。それと、Webやイベントなどでは知識が流れていってしまう可能性が高いので、何かにまとめて伝えていこうと思いまして、イベントと同名の「DESIGN IT! magazine」という雑誌の発行を開始しました。

――企業へのコンサルティングで、難しいポイントは?

ユーザビリティや情報アーキテクチャ、インタラクションデザインという、使いやすさに関する思想や技術は地味なんです。特にビジネス的に問題なのは、企業のマネージメントレベルの方がその重要性になかなか理解を示していただけないことですね。現場レベルでは重要性に気が付いていても、ビジネスとしての付加価値が伝わりにくかったりすると後回しにされてしまうわけです。実は、ユーザビリティをよくすればユーザーの印象がよくなって、企業ブランドが向上するといったロジックが成立するのですが、そのようなことに気が付いていただき、興味を持ってもらうというのが今一番必要だと思っています。そのためにイベント展開や雑誌の発行をして、この分野のことを理解していただきたいと思っているんです。

――実際にソシオメディア社が関わった事例というのは?

コンサルティング業務では、400社近くの実績があり、公開を許可いただいているケースとして新潟県のWebサイトやソニー生命の保険員の方が使われるアプリケーションなどがあります。ソフトのほうでは、三菱電機、ヤマハ、旭化成などの企業で導入実績があります。

――お話を伺っていると「使いやすさ」に対してかなり情熱を燃やしていらっしゃるようですが。

社会や人間の関係性がもっとよくなればいいなと思っています。それにはITが必要だと思うんです。まだITは人の道具としてはじゃまな部分が多いと感じています。もっとスムーズに使えるようになれば、道具として自然なものになり、社会にとって非常によい道具となるはずです。そのためにも、ユーザーインターフェイスをよりよくして、ITと人間の接点を変えていかなければと考えています。その結果、ITはソーシャルなメディアになっていくんじゃないでしょうか。

――篠原さんにとってWebとは?

Webは、ユーザーインターフェイスをよくすることができるんだと気付かせてくれたメディアです。ユーザーインターフェイスのデザインということについて学ばせてくれる好例でもあるし、代表的なメディアだと思います。Webがなかったら、ユーザーインターフェイスの重要性は、今ほど重要視されていなかったかもしれません。

--iPhoneのユーザーインターフェイスの開発も行っていると聞いたのですが。

当社ではいろいろなデザインのパターンというものを蓄積しております。iPhone用のデザインパターンも蓄積しておりますので、これを活用して企業に向けてiPhone向けサービスの開発に関するサポートをすると発表しました。たとえばiPhoneを業務アプリのデバイスとしたときの、ユーザーインターフェイス開発面でサポートさせていただければと思っています。

――今後のビジョンをお聞かせください。

コンサルティングのほうは、企業のニーズに合わせてやっかいな問題でもしっかりと乗り越えていけるようなソリューションができるように、スタッフを育てることですね。そして、そのスタッフの知識や技術が企業の開発するツールやWebに反映されて、よりITが使いやすい社会になってくれればいいなと思います。メディアのほうは、企業だけではなく、より広い人たちがユーザーインターフェイスデザインなどのノウハウを知り、よいものを作れるようになるための下地作りができればと思っています。また、今回のiPhoneは、ユーザーインターフェースがビジネスを変えることの証になるかもしれませんね。

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