Web人賞

和田 一也

ニフティ株式会社 代表取締役社長

ニフティの戦略


他産業に貢献する「ネット産業」を目指していく

日本のネットワークサービスの黎明期からパソコン通信、光、ブロードバンドサービスのプロバイダーとして20年以上の歴史を誇るニフティ。ブロードバンドが普及した現在は存在感が薄れてきたと思われている同社だが、和田氏が社長に就任後にネットサービスに注力し成果をだしはじめている。和田氏が実践した改革とは?

――和田さんがニフティの社長に就任してからニフティの広告展開やサービスなどが大きく変わったと思います。この方向転換の理由はなんでしょうか?

私は2006年6月にニフティの副社長に就任しました。ニフティに来る前に取引先などにリサーチをしたところ、ニフティの評判はそれほど芳しいものではありませんでした。ISPとしては知っているが、ニフティのサイトは使っていないし、提供しているサービスも知らないという感じでした。ニフティに来てから思ったことは、この会社はYahoo!にも楽天にもなれたはずだということ。ほかの企業が、持っている資源を全部ポータルサイト運営に注いだ時代に、ニフティはアクセルをふまなかったという印象がありました。やはりネットサービスの分野があまりにも停滞していたということです。そこで、まずはこの分野を活性化しなくてはいけないと思い、まずは私から服装をカジュアルなものに変えるなど、身近なことから始めました。

――ISPとしては会員数も多いし安定はしていたと思うんですが。

当時、Yahoo!とのページビューがどのくらい違うのかと聞いたところ、追いつけないくらいの差がありました。社内にはYahoo!とはビジネスモデルが違うという声までありました。それはおかしい。Yahoo! BBを含めれば、Yahoo!とニフティは、完全に同じ事業ドメインの会社です。最初から勝負を避けている印象があったので、私がネットサービスの分野を担当して活性化しようと思いました。そこで最初に提示したのが「楽しさを10倍にしよう」ということ。具体的にはページビューを10倍にするということなんですけど。そのために必要なお金は了解し、責任は私がとるから、とにかくやってみようと言いました。すると、いろいろなアイデアが上がってきて、実際にSNSや動画投稿、地図やプロフィールサービスなどが実現しました。その頃はページビューの上下に注目していましたから、毎朝社長室のところにページビューを張り出しました。ページビューが伸びないサービスの担当者は胃が痛かったと思いますよ。

――ニフニフ動画なんてかなり思い切ったサービスですよね。

今までのニフティの枠でとらえたら実現できなかったサービスですよね。なので、ニフティの本サービスと切り分けて「はみだしニフティ」ということで開始しました(笑)
当社としても実験的なサービスで、いつでもやめられるようにして始めたわけです。

――「y or n」というキャンペーンもインパクトがありました。

Yahoo!とニフティの違いはなんだろうという話になったとき、一番大きいのは、お客様を呼び込んでいないところだという話になりました。ニフティは会員のお客様は大事にしています。しかしただそれだけで、新しいお客様を呼び込む努力をしていなかったんです。世間一般のイメージとして、ニフティ会員にならないといろいろなサービスが使えないと思われていました。なので、ニフティ会員じゃなくても使えるんですよということをアピールしようとなりました。そこで、Yahoo!と比較して「y or n」というキャンペーンを行ったんです。Yahoo!は当時比較にならないくらいページビューが違いましたから、胸を借りるつもりでキャンペーンを実施してみました(笑)。一応Yahoo!のほうにお断りを入れたんですけれど、「どうぞどうぞ」と言っていただけました。懐の深さを感じました。
あのキャンペーンをやったときは、全員あのTシャツを着て大森駅から歩きました。飲み会もそれで行って、飲み屋のマスターにTシャツを配った。大森近辺をあのTシャツだらけにすることを目標としていました。それによって対外的なアピールにもなりましたが、実は社内にも「あの経営者は本気なのでは」と思わせた効果も大きかったと思ってるんですよ。

――和田さんがやられたことは、インターネットだからというわけではなく、いわゆる社内改革のような印象を受けます。

もちろんそうですよ。私が何かをできるわけではない。部下が働いてくれてようやく先に進めるわけですから。部下のマインドをどれだけ変えられるのか。確かにYahoo!とはとてつもない差があります。しかしそこで勝負をおりてはいけない。トラック競技でいえば、何周も差が付いている状態ですけど、敵は敵です。同じトラックで走っている限りは、同じ勝負をしているんですから、試合放棄はしない。その姿勢が大事ですよね。ありがたいことに、成果が実を結んで、私がニフティにやってきてから3倍くらいページビューが伸びています。すると広告の話も増えてくるし、途中入社の希望者も増えました。また、四半期ごとに給与を見直すというシステムを取り入れて、年功序列は廃止しました。これにより、給料が上がる人下がる人が出てきますね。頑張っている人は給料が上がり、そうでない人は下がる。一時的に下がっても頑張れば次は上がる。要は、普通の会社のようにしているつもりなんですよ。

――ニフティのこれからの方向性は?

これまでのお客様はISP会員がメインでした。しかしネットサービスを拡充して、その範囲を広げました。ISP以外の部分でニフティのIDを取得してくれたお客様が去年1年で150万人以上増えました。今年はもっと増えるはずです。そういうお客様に何を提供していくのか。そこだけを追いかけていきたいですね。インターネットの世界は「ネット業界」とは言われますが「ネット産業」とは言われませんね。それは、匿名文化のために起こるトラブルなどが前面に出てしまっていることが原因のひとつだと思うんです。そのようなことがメディアとしての信用力を落としている状況です。しかしニフティはそれはさせない。健全な媒体にしたい。スパムメールや誹謗中傷の書き込みなど、ネガティブな部分はできる限り排除していきたい。そうしないと、ネット上に書かれていることが陰湿で価値のないものという認識しかなくなってしまう。だから、インターネットの世界に身を置く立場として、そういう人たちに対してはきちんとした対応を行い他産業に貢献するくらいにしていきたいと思っています。

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