Web人賞

津田 全泰

フォートラベル株式会社 代表取締役会長兼CCO

フォートラベル


Webだけにとどまらず旅行がもっと楽しくなるようなプラットフォームを作りたい

SNS的なつながりを持つこともできる旅行口コミサイト「フォートラベル」は、旅行ファンから圧倒的な支持を得ているCGMサイトの成功例である。代表の津田全泰氏は、旅行系サイトの運営に携わった経験からヒントを得て、旅行業界を再構築するという壮大な目標を持っている。フォートラベルのサービスは、Web上だけでは留まらないシステムとして考えているのだ。

――フォートラベルのサービスを開始したきっかけは?

 もともと大学時代(95年)にインターネットと出会って、これはすごい、いつか自分もネットで起業したいと思っていました。当時ネット企業としてNetscapeとかYahoo!が日本に入ってきていましたが、大学2年のときに本場アメリカ・スタンフォード大学に留学したとことも、その思いを強くさせた理由のひとつですね。

 ただ、いきなり大学卒業して起業しようとしても、ビジネスのことを知らないし、ネタもない。ネットで本気でビジネスをやっている企業を探そうと思ったんですけど、当時の日本にはヤフーくらいしかなかった。で、たまたま、日経産業新聞を見ていたら楽天の記事が出ていて、ホームページを見たらハーバードとか東大とか、同じ大学(慶応SFC)の先輩もいて、この2つの企業を天秤にかけたときに、どっちが伸びるかなと考えました。将来起業することを考えたら小さい組織の方がいいだろう、しかもオーナー経営者がいいだろう、ということで、楽天を選んだんです。

 楽天では、大学4年の8月から働かせてもらって、合計5年間経験を積みました。その中で最初の3年は楽天市場をやって大盛況。当時「旅の窓口」がすごい伸びてたので買収したかったらしいんですけど実現できず、それならば自社で立ち上げようと言うことで、楽天トラベルを始めました。僕は副事業部長的な役割でシステムの外注担当をやったり、業務フローの構築をやったんですけど、結果的には大失敗でまったく追いつけず、敗北でした。

 この経験の中で、疑問に思ったことがありました。立ち上げたとき、すでに国内のホテル予約サイトは30個くらいあったんですよ。ビジネス、レジャーから高級まで。そこになんで参入しなきゃいけないんだと。僕がユーザーだったら、30個のサイトからまとめて検索できるような仕組みの方がよっぽど便利でしょ、在庫とか料金とか全然違うし、そういうメタ検索の方が役に立つと思ったんです。もうひとつは、予約サイトにしろ一括検索にしろ、旅行者の予約をするというフェーズを満たすサービスなわけですよね。どんな商品でも消費チェーンがある。予約をしてから実際に旅行に行って、その後の感想を持つわけです。引いて考えると、旅行に関する消費チェーン全体をシームレスに利用できる支援ツールは、どうしてないんだろう、と感じたんです。儲かるかよくわからないけど、これはネタになるだろう、と思ってフォートラベルを立ち上げました。

――個人で使えるブログが作れることも特徴ですが、最初からあったんですか?

 そうですね。僕らはコンテンツもお金もないから、ブログを提供してデータベースを作らないことには何も競争力がないので、まずはここからということで。

――ビジネスモデルはどのようなものだったんでしょうか?

 結論を言えば、SEOで集客してアフィリエイトで収益化したというだけです。SEOは当時注目されていたということと、楽天トラベルでアフィリエイトをやっていて、お金を払う立場だったので、どうしてこんなサイトがお金を稼ぐんだろう、という疑問もあって、この2つがビジネスモデルとして使えるんじゃないかと考えてんです。

 これを作る前にちょっとしたサイトで実験して、月2~3万ですけどアフィリエイトで利益が上がるというモデルが実証できたので、本気で法人としてできると思いました。

――立ち上げ時の人数は?

 最初は2名です。僕とあと一人の創業者の請川というのがいて、僕はネットオタクで、彼は添乗員とかをやっていた旅行マニア。この2人がオールラウンダーとしてプログラムから何から一通りやりました。初期はオフィス代がもったいないので、マクドナルドの無線LANを使って作ってました(笑)。

――立ち上げ時は順調だったのでしょうか?

 集客は予想以上で、1年後には2300万の売上がありました。コストはほとんどかかっていないので、結構儲かるね、と言ってました(笑)。
 コストはとにかくかけないという意識していて、初年度にかかったお金は、人件費以外17万円しかかかっていません。サーバ代5万と回線費月1万。ソフトウエアはオープンソースだし、アフィリエイトは初期費用がかからない。データベースはユーザーが入れてくれるわけですので。ただ、SEOの本が1万円くらいかかりましたかね(笑)。

――それからは順調だったのでしょうか?

 ちょうど1年経ったときに(2004年9月)カカクコムに会社を売却しました。これにより、カカクコムのトップページからトラフィックを流して貰ったり、アフィリエイト1本だと柱がないので、広告営業の信頼性を得ることができました。この2つのバックアップを受けて伸びてきたと思います。

――立ち上げるのは、旅行のサイトじゃなくてもよかった?

 インターネットによって既存の業界を再構築するというのが趣味なんです(笑)。ネット業界の大半は、ネットの「機能」を作っている人たちです。インフラからはじまって、広告発信システムや、SNS・掲示板といったサービスまで色々な分野はありますが。彼らとは違って、僕は新しい「機能」には興味がありません。むしろ、そういう機能をどう組み込めば、既存の業界が効率化されたり、活性化するのか、という発想で見ることが多い。だから、業界は特に旅行じゃなくてもよかったです。

――今後の目標は?

 フォートラベルは、口コミサイトと言っていますが、目指しているのはそこではありません。ユーザー側の消費チェーンだけではなくて、サプライチェーンもサポートして、旅行業界を再構築したい。(サプライチェーンに)無料のIDを発行して、管理画面を提供して、例えば「うちはモルジブに強い旅行代理店だよ」とPRできる枠を提供したい。もっというと、今ユーザーが4万人でQ&A掲示板を利用してますけど、質問に答えるのがサプライヤーでもいいんじゃないかと。4万人に混じって黙ってユーザーの振りをしてやるのはダメですけど、旅行会社マーク見たいのを付けておいて回答していけば、「真摯に回答してくれるけどどんな会社なのかな?」とユーザーが思うかもしれない。今回評価していただいたのはCGM的なところだと思うのですが、そこで終わるつもりはなく、旅行業界のプラットフォームにしていきたい。2~30年はかかると思いますが(笑)。

 それから、今はPC上でやっていますが、デバイスは電話だろうが、紙だろうが、テレビであろうが何でもいいと思ってます。フォートラベルブランドのサービスをいろんなデバイスから利用して、旅行がもっと楽しくなるようなプラットフォームが作りたい。まず、ネットでやるのが費用対効果で一番いいと思うんですが、ネットで終わるつもりもありません。

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