Web人賞

前田 邦宏

株式会社関心空間 代表取締役

関心空間


「関心」というテーマでユーザーをつなぐ空間を演出

発信した情報に他人の情報という「利息」がつくのが魅力


ユーザーが「関心を持っているテーマ」を結びつけるコミュニケーションサービス「関心空間」。これまでユーザーが意識的にリンクしなくては成り立たなかったもの同士を、関心ごとをつなげるという切り口で新しいリンクの可能性を見出している。この関心空間の総合プロデュースを行っているのが(株)関心空間の前田邦宏氏だ。

――関心空間の仕組みを思いついたきっかけは?

 人と人とのつながりを考える場合、例えば現実の都市を見た際に、都市の構造や設計という物理的なレイヤーのつながりだけではなく、そこで生活する人々のつながりというものがあります。都市の構造が元で人がつながる場合もあれば、人のつながりから都市構造が変化する場合もあるでしょう。それと同じような構造がインターネット、あるいはWebにもあると思います。Web上ではそれぞれの人のつながりがある一方で、個々の人が「関心を持っているもの」で別のレイヤーが存在します。この関心を元にして空間もシェアできる形を模索したものが、この関心空間なんです。
 1994年に現在広く利用されているSNSと同様のサービスを開発したことがあります。企画自体はボツになってしまったのですが、その中でSNSが持っている限界や問題点を体験することができました。その体験を経て、価値観としての「関心空間」がメンバーの間で共有できる状況が生まれたんですね。
 そもそもWebやBlogといったものは、自己表現のスキルが高く、それを継続できる人でなければ情報発信を続けることができません。そのモチベーションが下がってしまえばWebやBlogは更新を停止し、ページそのものがなくなってしまうことも多い。しかし関心空間ではサービスとユーザーがいる限り、そこに掲載された情報とその価値は残り続けるわけです。こうした継続性のためか、現在も20人/日の割合でユーザーが増え続けていますし、同様に100~150/日の割合で新たなキーワードが登録されています。

――関心空間のサービス開始までの流れは?

 当初の作業はマネジメント担当の前田邦宏とプログラマの鈴木、デザイナーの上坂を中心に行いました。もともとのシステムは独立したプログラムとして作られていましたが、鈴木の提案でWeb上のサービスとして再構成しました。「関心」という名前に代表されるように、コンセプトに感覚的な部分が大きいため、まずは友人の中で感性の高い人たちでコミュニティーの原型作りを行いました。個々のメンバー間でコラボレーションしながら作品作りを続け、2001年の7月11日に原型となるサービスを社外のユーザに解放することになりました。それぞれの立場から横断的に物事を見られるメンバーが揃っていたことが関心空間を立ち上げる大きな原動力になったと思います。

――関心空間のこれまでの評価と今後の目標について聞かせてください。

 雑誌に取り上げられたり、グッドデッザイン賞を受賞するなど、インターネットのことを理解している人々からの一定の評価は得られたと考えています。サービスそのものについては登録したユーザーのさまざまな価値観やライフスタイルを「製品」や「関心ごと」といったキーワードを介して有機的に連結し、情報共有の新しい形を提供できていると感じています。これまでは情報を共有するだけのフェイズでしたが、これからはそこで得られた情報を「価値」へと変えるフェイズを目指しています。
 情報を価値へとつなげるためには一般ユーザーだけでなく、ビジネスクライアントとの連携が欠かせません。現在関心空間のシステムを利用した法人への導入が始まっており、広告のひとつの手法としての活用され始めています。ビジネスとして関心空間を捉えた場合、「なぜWebページを作るのか」「顧客との対話とはなにか」というクライアントの本質的な価値に向き合わなくてはならない仕事であることに、計り知れない魅力と困難さを毎回感じています。ただし、ここを乗り越えた瞬間にネットだけがなし得る新しい関係が生まれるのだと信じています。

――ユーザーからの評価は?

 任意に情報登録をお願いしているにもかかわらず、正確な「住所」を入れたキーワードが2万件程度登録されている点は、関心空間というサービスを信頼しているというユーザーの意識の表れであると思っています。これはサービスを提供する側にとって非常にうれしいことですね。関心空間では自分が情報を提供することで、それに対してコメントがつけられます。あるテーマを軸に多人数で更新できるBlogのようなものであると思います。そこでつけられるコメントは自分のコメントについた「利息」のようなものではないでしょうか。情報を提供することで利息がつくのなら、自分が持っている情報を積極的に提供してみたいと感じてもらえると思います。単に情報を提供するだけでなんのリターンもないのでは、情報発信に対するモチベーションも上がらないでしょう。ユーザーは、情報と情報提供に対する利息だけで広がっているんです。

――関心空間の目指すものとは?

 ひとびとの関心を起点につながりをつくる、このテーマは、広告とコンシューマの関係をかえるひとつのきっかけになると考えています。また、この流れを加速させるのは単にマッチング技術だけでなく。インターフェイスデザインについて考える必要性があります。例えば電話による会話なら顔が見られなくても声のトーンで雰囲気を伝えられます。しかし文字ベースのメールやWebでは問題が発生することがあります。これは実世界では簡単に伝わるものが、未だネットでは伝えにくいという課題であり、これからのインターネットをより発展させるためには空気感や物事の雰囲気を伝えられるインターフェース作りが求められていると強く感じています。

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