Web人賞

藤本 恵理子

ニフティ株式会社 宣伝部

ウイルスの恐怖展


ISPとして、ネットの危険情報をあえて供給

ボトムアップによる展開で安心・安全なイメージが上昇


インターネット利用者が「知らない」ことが理由で被害に遭うケースが多いコンピュータウイルス。その問題をインターネットサービスプロバイダーとして取り組んだのがニフティ(株)の「ウイルスの恐怖展」だ。2004年11月24日~1月31日までに期間を限定して公開したこのコンテンツでは、インターネットにおける危険と対策についてプロダクトをベースに紹介したもの。同社のユーザーだけでなく、広くインターネットユーザーに呼びかける形で展開した。コンテンツ制作に対して、新しい試みとして社内のさまざまな部署に属する5名を幹事としたワーキンググループを立ち上げた。このワーキンググループのリーダー的存在としてコンテンツ制作を取り仕切ったのがニフティ(株)の藤本恵理子氏だ。

――「ウイルスの恐怖展」を行ったきっかけは?

 インターネットサービスプロバイダー(ISP)として、インターネットを利用する上での危険性とその対策を、特にブロードバンドユーザーに正しい知識として理解してもらうことが目的でした。その一方で同業他社との差別化できる活動でもありました。当時、ISPの「売り」は速度・パフォーマンスと料金の安さの2つに重点が置かれていました。しかし一般のユーザーを対象にリサーチしたところ、ISPに対して求めるポイントとしてウイルスを含めた危機管理を挙げる方が多かったのです。そこで、ISPとユーザー間のコミュニケーション活動のひとつとして、インターネット利用における課題をブロードバンドユーザーにお知らせする役割があるのではないかと気づきました。こうした事実から、ウイルスをはじめとするネットの危険を企画テーマとすることに決定しました。

 この企画を開始するまでは、ISPがネットの危険について語るのはマイナスのイメージがありました。実際には必要な知識なのにマイナスイメージがあるという点を変えたかったという思いもありますね。ニフティでは通常トップダウンあらかじめテーマが与えられて、コンセプトを決めていくことが多いのですが、今回の「ウイルスの恐怖展」ではワーキンググループを組成し、ボトムアップによる提案を行いました。そういう点でも新しい動きとなっています。また単にISPとしてユーザーの取り込みだけを考えず、広くインターネットユーザーに対してウイルスの被害を避ける方法や実際に被害にあったときの問題解消ができるような仕組みづくりを行いました。

――テーマの決定からコンテンツ公開までの流れは?

 リサーチ開始から公開まで約半年と短い期間での作業となりました。今回ワーキンググループの幹事として参加したのは、プロジェクト・マネジメントを担当した私と、リサーチ、マスコミ向け広報、Webのクオリティコントロール、プロダクトの5名で、それぞれ社内の別の部署に属するメンバーです。各メンバーはワーキンググループ外の業務にも従事しているので、当初は定期的にミーティングを行いながら作業を進めていましたが、徐々に必要なときに必要なメンバーのところへ直接出向いて意見交換をする体制ができあがりました。各々の部署での仕事と並行して作業を継続する形をとる予定だったのですが、最終的に公開前の1ヶ月間はほぼこのプロジェクトに全員が注力する状況となってしまいましたね。
 ワーキンググループ内で議論になったのはウイルスの問題を伝える際に「どこまでやっていいのか」という点です。「恐怖」を前面に出しすぎるのも問題ですし、色々なレベルを常に考えながら企画を考え、進めていきました。それでもレベルの差はあり、Web用のバナー広告では一部の媒体で「内容が恐怖を煽りすぎる」とのことで掲載拒否されるといったこともありました(笑)。

――実際にウイルスの恐怖展を見たユーザーからの反応は?

 開催期間の11月24日から1月31日までで約500万件のアクセスがありました。「ウイルスの恐怖展」ということで「恐怖」をある程度前面に押し出した形のコンテンツにしたため、内容的に良いという評価が得られる反面で、恐怖を煽った部分について否定的なコメントも寄せられました。コンテンツの中でアンケートを行ったのですが、閲覧した8割のユーザーに「ウイルスなどの危険性について理解できた」と回答して頂けました。副次的な効果としては「安心/安全なISP」としての満足度調査で、以前は2位だったものが1位になり、紹介したプロダクトについても満足度がアップしたという結果が得られました。

――ワーキンググループの今後の活動予定は?

 6月15日から7月31日まで、ほぼ同じワーキンググループのメンバーが手がけた続編コンテンツとして「“光”の危ない話」を公開しました。ウイルスの恐怖展に比べて難しかった点は、商品(光ファイバー)のプロモーションを兼ねたことですね。そこで“光”の危ない話ではウイルスの恐怖展のメンバーに加えて光ファイバーの販売担当者もグループに参加しました。ウイルスの恐怖展でもなるべく広告色を抑え、広くユーザーにインターネットを使う上での危険性を理解していただけるように注意していました。「“光”の危ない話」では、コンテンツそのものとインフォメーションを切り分けることであまり広告を前面に出さないように配慮しました。
 Web上のこのようなコンテンツでは、Webだけにとどまらずにクロスメディア的な展開をする必要性が高いと感じています。このような企画を進めていく上では、それぞれのメディアの特性や状況などを理解するのが大変ですね。その上でWebは動画やインタラクティブコンテンツなど、Webでしかできない表現ができるという魅力があると思います。伝えたいことをユーザーに理解してもらう上で、Webが持っている可能性や表現手法は非常に有効であり、今後さらに注目されるメディアだと思います。

PAGE TOP