Web人大賞

近藤 淳也

株式会社はてな 代表取締役

はてな

人力検索を皮切りにさまざまなサービスを提供

ビジネスモデルを考えるより、
面白く便利なサービスを作ることが重要


インターネットの初心者はもちろん、上級者でも手がかりの少ない事柄を検索するのは非常に困難な作業。どれだけ時間をかけても「キーワード」が正しくなくては正しい情報にたどり着くことができない。この問題をすっきりと解決するにはやはり「人の力」こそが重要だ。「はてな」はそんな人力による検索を基本にさまざまな便利機能を統合したサービスだ。アンテナ/ダイアリー/アイデア/ブックマーク――などのサービスを続々と追加し、ユーザーに新たなツールを提供し続けるはてなの中心人物が、(株)はてな社長の近藤淳也氏だ。

――人力検索サイト「はてな」を始めたきっかけは?

 私の父親がインターネットで検索エンジンを使っているところを見たことが発端になっています。一生懸命検索しているのですが、なかなか思い通りの結果が得られずにいたんですね。誰かに質問すれば答えてもらえるかもしれませんが、質問できる場所がない。きっと他にも同じような苦労をしている人がいるだろうと考え、ある問題や疑問、調べたい事柄に対して、誰かが回答するシステムを作ろうと考えたんです。実際に2001年7月に人力検索のサイトを公開し、開始から1年間で1000名のユーザが加入してくれました。
 はてなではポイント制を導入して、質問に対して回答してくれた人にそのポイントを加算するという仕組みを用意しています。役に立つ情報を提供した人には、それに見合う対価が支払われるべきだと考えたからです。

――続々と新サービスが追加されていますが、この開発の流れは?

 社員13名のうち8名がプログラマで、私を含めた全員で問題の修正やバージョンアップ、新機能の追加を行っています。基本的に全体をフレームワーク化し、プログラマの誰もがすべてのプログラムコードを触れる体制作りをしています。必要な作業すべては段ボール箱を4つに仕切った「あしか」システムでタスク管理をしています。この箱はペンディング/そのうちやる/すぐやる/終了の4つに仕切られていて、タスクを記したカード――実際はコピーの裏紙なんですが――を分類しています。各人が箱の中からタスクを拾い、終わったら次の仕切りに移動するわけです。非常にアナログ的なんですが「終了」の仕切りに溜まったカードを見ることで具体的な達成感が得られます。
 「あしか」を使うのは一般的なルーティンワークの場合で、新サービスの開発といった特別なワークに関してはまったく別の手法を取っています。実は、プログラミングを集中的に行うために合宿をしているんです。まず合宿先までの移動中の車内でそれぞれ新しく導入する機能を話し合います。制作するものが決定してから宿泊先に向かうんですが、決まらなければ到着してから仕事が始められないので、目的地の周りをグルグル回り続けるんです(笑)。テーマが決まったら、それに沿ってプログラミングを行い、帰る日までに新しいサービスがひとつ誕生している、といった感じです。合宿をすることでプログラマ全員がその内容を共有することができ、その後の管理や機能追加なども全員が行えるようになります。合宿は大体月~水曜日で行うので、発案からプログラム作成、テストなどを含めてその週の木曜日にはまったく新しいサービスを公開といったスケジュールで進行しています。最近追加したサービスやこれから追加する予定のものは、すべてこの合宿から誕生したものです。

――近藤さんが考えるインターネットとは?

 インターネットそのものはいろんな可能性を持っていると思います。例えばWebを作ろうとする人にとっては、自由な資材と土地を与えられた建築家に似た環境だと思います。ものづくりの好きな人間達が技術や資材を適当に調達して、何かを作ることができるという夢のような環境ですね。思ったことを好きなように作り出せる、とても楽しく興味のつきない場所でしょう。もちろんそこに参加する人数が増えてくることで商業的な側面が生まれるのは当然です。しかし今はまだ色々と実験的なことができる段階ではないでしょうか。その一方でWebページ作成そのものは、どこまでいっても趣味の面が強く、最終的に閉塞感があります。
 「はてなダイアリー」は、この閉塞感を無くすために考えたサービスです。個人のWebページの運営状況を見ていると、最終的に更新が続くコンテンツは日記と掲示板に集約されるケースがほとんど。そこに着目して、日記と掲示板をくっつけたtDiaryの構成とWikiによるキーワード管理の概念を組み合わせてサービスを構築しました。私としては体験に基づいて面白いと思ったサービスを提供したいという思いがあったんですが、たまたま同時期にブログが流行りはじめてしまいました。同じものを作ったわけではないですし、本当に便利なものが業界の標準になるわけではないと感じましたね。

――はてなを取り巻く環境と今後について聞かせてください。

 人力検索サイトからはじまり、アンテナやダイアリーサービスの開始で15万ものユーザーがサービスを利用してくれるようになりました。その後もユーザーは増え続け、現在では約30万ユーザーに登録して頂いています。このように発展を続けてられる理由として、サービスの価値についてユーザーとの間で感覚的な共有が果たせていることが挙げられます。新機能を追加するとき、スタッフの間で「はてならしい」「らしくない」という言葉が出ます。この「らしさ」が示すものを、ユーザーとも共有できるようになってきたと感じています。内部情報を可能な限りユーザーへ開示するほか、Skypeを使ってユーザーを社内会議に招くといったことも行っています。こうしたことから、新たな発見や思いつきが生まれることを期待しています。
 インターネット上の多くのプロジェクトは、ビジネスモデルを事前に考えて、議論が固まってからゴーサインを出します。しかしはてなでは事前にビジネスモデルについては考えていません。立ち上げの段階では収益を考える以前に、面白く便利なサービスを作ることだけを考ることが最重要だと考えています。
 これからのはてなに追加していきたいのは、情報の価値とポイントの価値の交換の仕組みです。もともとはてなにはポイントシステムがありますが、人力検索以外でもユーザーが提供したコンテンツに対して報酬という形でポイントの受け渡しを行えるような仕組みを考えています。そのひとつがアイデアをはてな上で株式公開するもの。見事アイデアが採用されれば配当を受け取れる、というものですね。他には、インターネット上の投げ銭システムの構築というものも考えています。「お金を払わないと読めないコンテンツ」というとユーザー側にとっては楽しみにくいものですが、いいコンテンツを提供した人に対して少額でも対価を払える仕組みを用意したい。その中で個々のユーザーがはてな上でビジネスモデルを構築してくれれば、という夢があるんです。もちろん、これらの議論もはてなサイト上ですべて公開しています。

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