Web人奨励賞

松原 慈

assistant 代表

HAPPY CITY


個人のちょっとした「幸せ」の積み重ねが、ストリートの新しい側面を見せてくれる

アイディアがサービスを生み出し、街をも動かす

Happy Cityは、人々が「happy」を感じた場所を、携帯電話の位置情報を使って集めるサービスだ。個人のhappyを集めることで都市の新しい一面が探れるのではないか、こう感じた松原慈は漠然としたアイディア思いついた。あふれ出るアイディアを企画書にまとめ、IPAが開催する「未踏ソフトウェア想像事業2002」に応募、見事に採択された。Happy Cityは一通りの開発を済ませ、次の展開のために新たなアイディアを練っている。

―― Happy Cityの開発を始めたきっかけを教えてください。

以前から、GPSや携帯電話に関しては強い興味があり、いくつかのアイディアを構想を進めていました。大学の先輩から、IPAの「未踏ソフトウェア創造事業2002」を聞き強い刺激を受けたんです。一気にアイデアが固まってきて、サービスを自分で作りたいと思うようになりました。
そこでアイディアを元に企画書を一気に書き上げ、了解を取ったメンバーを共同開発者として応募したところ、みごとに採択されました。なお、採択されることが分かった後に、メンバーは共同開発者であることを正式に伝えましたが、本当に応募したと思っていなかったようで、ビックリされましたけどね。
さて、Happy Cityを簡単に説明すると、GPS機能付きの携帯電話を使ったアプリケーションです。街で「happy」と感じた時に、携帯電話でhappyボタンを押すと現在の位置情報がサーバに送信されます。サーバには皆さんが感じた「happy」の位置情報が溜まっていき、どんな所がhappyなのかがリアルタイムでチェックできます。happyの送信は携帯電話のみですが、チェックはPCと携帯電話で可能です。
都市は誰かが価値を決めた「動かない物」ではなく、生活する人の意志で「変化する物」です。楽しい場所はお台場や遊園地のようなプレイスポットだけではなく、もっと身近でいろんな場所にもあるんです。これを携帯電話とインターネットを使って目に見えるようにするのがHappy Cityの目的です。
Happy Cityは個人の意見が反映されるシステムです。自分のお気に入りの場所でhappyを送信し続ければ、地域で一番happyな場所になるかもしれません。都市に対して情報を発信することができ、誰もが都市を動かすことができる。都市をインタラクティブに捉えられれば、もっと面白い生活が送れますよね。

―― 未踏ソフトウェア事業に採択された後の開発は?

さて、運良く未踏ソフトウェア想像事業に採択されて助成金を得ることができたので、早速開発に入りました。すぐにスタジオを借りて、ADSLを引いてサーバを用意。ハードウェアは揃いましたが、メンバー全員が携帯電話のコンテンツを作るのは初めてだったので、初めはすべて手探りでした。
でも、「今まで見たこともないモノを作れるんじゃないか?」。見たこともない楽しそうなサービスを自分たちで作れるかもしれない、そんな想いがメンバー全員の一番大きな原動力でしたね。
共同開発者は有山宙君、須之内元洋君、田内学君、山田智之君。私を含めて、建築デザインの人間が多いのですね。建築畑でもコンピュータに興味がある人だったり、データマイニングが専攻だったり、得意な分野が異なる大学の友達です。システム設計を担ってくれた須之内君は、ずいぶんリサーチをしてがんばってくれました。
未踏ソフトウェア創造事業で、Happy Cityのプロジェクト・マネージャーを担当してくださった早稲田大学の村岡洋一先生には、たくさんの貴重な助言をいただきました。ジェイテックプレーヤーズ(現サンライズネット)の濱岡邦雅さん、本間康雄さんにはプロジェクト管理として色々と助けていただきました。人を集めて渋谷で実験するときに、 KDDIの大橋正良さんが協力してくれました。
また、個人的に東京大学の坂村健先生にもお世話になっています。

―― Happy Cityが完成したときはどう思いましたか?

自分たちで使ってみて、本当に都市での新しい遊び方を提案できる可能性があると思いました。ただ、Happy Cityはユーザが多いほど楽しくなる、コミュニティサービスの面もあります。どうやって多くのユーザを惹きつけるかは、課題のひとつですね。
Happy Cityは、個人の意見が全体を決定するため、善意のhappy送信が無ければ成り立ちません。実際のウェブ世界には悪意があるのも事実ですが、みんなの「いたずら心」も含めた上で、Happy Cityがどのように成長するか、自分でも興味を持っています。
今、公開しているバージョンはhappyの状況をを色で表示していますが、happy状況を3Dで表示するバージョンも作りました。開発に苦労したこともあり、メンバーの間では好評だったのですが、他の人の反応があまり良くないためお蔵入りしています。

―― Happy Cityの将来の展望をお聞かせください。

Happy Cityを手がける前に「簡易バージョン」を開発しました。これが、キヤノン主催の「デジタル・クリエーターズ・コンテスト」で「macromedia 賞」をいただきました。また、企業からシステムの供給依頼を受けることがありますが、ビジネスに繋げるがあまり得意じゃないので、いつもつまずいてしまいます。ビジネス化は大きな課題です。
今は、ストリートで起こることに強い興味を持っています。ストリートにはデザインされたルールはなく、そこをどう使うか。生活者としてのアイディアがとても重要です。Happy City自体の大きな改良は考えていませんが、今後、建築のプロジェクトなどと組み合わせて、新しい展開が出来たらいいと思っています。
これからも「面白いことをしよう!」と思った時に、「ウェブを使うと簡単にできること」や、「ウェブでしかできないこと」が多数出てくるでしょう。Happy Cityを通じて、これまで消費する対象だったウェブが、目的を達成するためのツールになったと思います。
今はロンドンに住んでいますが、日本のメンバーとウェブカメラを使ったビデオ会議を週に1回しています。アイディアの共有には、ウェブログを使ったアイデアボードを活用していますね。おかげで、東京にいた時と同じようにプロジェクトを進められます。インターネット技術の進歩の恩恵をすごく受けているなと感じています。

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