Web人貢献賞

深水 英一郎

株式会社バーチャルクラスター 代表取締役

まぐまぐの創設


面白い記事が読みたい、公開したシステムが大きく事業に成長

メールマガジンは手軽に自己表現できるメディア

個人向けのメールマガジン発信サービス「まぐまぐ」は2万9,000誌のメールマガジンを配信している。簡単に自己表現できるメールマガジンは、インターネット普及の過程で大きな役割を果たしたと言えよう。手作業でメールマガジンの発行を始めた深水英一郎は、増える読者に対応するため配信システムを作り上げた。このシステムは後に「まぐまぐ」として大きく成長することになる。

―― まぐまぐを立ち上げるきっかけになったものは何でしょうか?

だいぶ前の話になりますが、手作業で作っていたメールマガジンが原点ですね。
95年から96年ごろでしょうか、初めてインターネットに触れました。アメリカにあるサーバに接続して、そこにある画像を手元のパソコンで表示できる。世界中のサーバからパケットが中継され、地元のプロバイダまで届く仕組みは、大きな驚きでした。当時はインターネット・エクスプローラどころか、ネットスケープも無く、ブラウザはモザイクを使っていました。
そのうちネットスケープが流行り始めて、付属のメーラーの同報送信を使えば「メール雑誌」になると気づいたんです。最初の読者は10~15人でしたから、購読者のメールアドレスをBCCに入れて、手作業で送っていました。個人で手軽に発行できるメールマガジンですね。
入会や退会はすべて手作業で、そのうち読者が増えすぎてパンク。システム的にメールを管理して、自動的に送信するように切り替えました。後に、このシステムが「まぐまぐ」に大きく成長します。
似たような仕組みでメーリングリストがありましたが、これは双方向性のコミュニティです。メールマガジンは手段としてメールを利用するものの、原則として一方向のメディアです。

―― メールマガジンを事業化した転換点はどのあたりでしょう?

僕は文章を読むのが好きでしたが、実は結構ものぐさです。メールマガジンを書くためのツールを用意すれば、書きたい人が集まってくれるのではないか。自分のシステムに書きたい人が集まってくれれば、僕は書き手を探さなくても多くのメールマガジンに触れることが可能になりますよね。
そこで、自分用に作ったメールマガジン用のシステムを他の人が使えるように拡張しました。これがまぐまぐの原型になります。
情報を発信する人には情報が集まります。そうすればさらに面白いメールマガジンが登場してきます。メールマガジンの発行数は増加する一方でした。最初はすべてのメールマガジンを読んでいましたが、読み切るのに半日かかるようになり断念。読むメールマガジンを選別するようにしました。
この頃は、当時勤めていた会社の回線を借りていました。あまりに購読者が増えて、会社の128Kbpsの専用がパンパンになってしまったんです。この出来事にメールマガジン事業の可能性を感じて独立しました。読者数が爆発的に増えていたため、広告媒体として成り立つと思えたのです。

―― まぐまぐの立ち上げですね。

社長に大川弘一氏、技術者の西村昌明氏を迎えて事業化しました。独立してすぐは設備がありません。京都リサーチパークご厚意での設備を使わせてもらいました。「コーラをおごる」という約束でサーバを貸して頂いたんです。それから自前のサーバを用意しました。中古で買ったペンティアムII搭載PCだったと思います。
メールマガジンで独立したからには、何らかの方法で利益を上げなければなりません。すぐに思いついたのが広告でしたが、問題は広告の入れ方です。作家が出しているメールマガジンに広告を入れると、読者や作家から反発される可能性がありました。そこで、全読者向けのメールマガジンに広告を付けるようにしました。広告収入を試算したところ、これだけで十分会社が回ることが分かりました。
徐々に事業としてまぐまぐが回り始め、まぐまぐの一線から手を引きました。メールマガジンの発行で必要な機能を一通り実装してしまったのが要因です。僕がこだわった部分のほとんどを達成してしまい、新しい分野にチャレンジしたくなりました。今はまぐまぐから離れ、大まかな枠組みのコンサルティングに応じています。

―― メールマガジンをはじめとした、今のウェブ出版をどう感じますか?

メルマガの黎明期に比べて、ウェブに面白いコンテンツが増えたと感じます。プロ・アマ問わず、雑誌より面白いウェブ媒体もあるぐらいです。これは紙媒体にも変化をもたらしてきていると思いますよ。「読ませたい」主張を持って出版している雑誌が減ってきたように思います。広告を見せたい雑誌は増えましたけど。
これは、出版をやっていた人たちがウェブに乗り換え始めたのが要因ではないでしょうか。フリージャーナリスト、ライター、編集者など、紙媒体を担ってきた人材の移動が始まっているはずです。
今面白いウェブコンテンツは、FLASHアニメですね。マンガの創世記のような「熱さ」を感じます。今はFLASHアニメ作者が無報酬でコンテンツを作っています。しかし、情熱だけではいつか燃え尽きてしまいます。収益を上げる仕組みを作らなければ、FLASHアニメを文化にまで高めることはできません。こういった、新しいデジタルコンテンツの出口を作ることができればと思っています。

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