Web人貢献賞

伊藤 穣一

株式会社ネオテニー 代表取締役社長

infoseek


ウェブでの情報流通の発達は、プロモーションにも革命をもたらす

検索エンジンはウェブ広告の評価軸を変えた

現在、ウェブには40億を上回るページが存在すると言われている。これほど膨大なページを手作業で分類するのは不可能だろう。伊藤穰一はウェブページの爆発的増加を感じ取り、日本初のロボット型検索エンジン「Infoseek Japan」を立ち上げた。検索エンジンと広告モデルを組み合わせ、検索エンジンがビジネスとして成り立つことを証明。ウェブ広告に「効率」という評価軸をもたせる事に成功した。

―― infoseekを日本でも立ち上げた理由は?

infoseekを立ち上げようと奔走したのは1996年でしょうか。日本では、「インターネット」という単語が世間の注目を集め始めた頃です。同時期のアメリカは、ウェブビジネスの方向性が定まり始めていました。試行錯誤の末「広告モデルが利益を上げられる」と分かり始めたんですね。
インターネットの発展と共にウェブページが加速度的に増え、人間では管理しきれなくなるほど巨大なページ群になる事は予測できました。そのときには、ウェブから情報を引き出すための「ロボットによる検索エンジン」が必要です。大量のウェブページから、目的の情報を含むページを探すサービスがなければ、インターネットの発展はあり得ません。
ウェブをメディアとして捉えたとき、人の行動の起点になる検索エンジンは大きなページビューが見込めます。アメリカで成功していた「広告モデル」と検索エンジンは相性が良さそうだ。そう感じていたため、検索エンジンを事業として立ち上げようと決意しました。
日本では、ソフトバンクの孫社長がYahoo!と提携、Yahoo! Japanの立ち上げを始めてしまいました。そこで、技術的に最も優れていたロボット検索エンジンのinfoseekと提携、Infoseek Japanを立ち上げました。

―― infoseek Japanができた頃のインターネットは?

日本のインターネット黎明期ですから、今となっては笑い話のような出来事がたくさんありました。
たとえば、ユーザがバナー広告クリックすると掲載企業のサイトに遷移する。今ではごく当たり前の広告モデルですが、当時は広告主に理解して頂くのに苦労しました。そもそも企業サイトが少ない頃です。リンク先の企業がサイトを持っていないため、急遽サイトを立ち上げて頂いたこともあります。
ウェブ広告が広告主に浸透していない時代で、誤解や勘違いも多数ありました。たとえば、ローテーションが設定されているバナーは、契約したインプレッション数に応じて出現比率が自動的に決められます。ところが、社長に広告をプレゼンしたときにバナーが出てこなかったらしく、「ページを開いたのにウチのバナーが出てこない」とクレームをうけることもありました。
このほか、「検索エンジン」の仕組みをウェブページの作者に理解して頂けないこともありました。「コンピュータがページを自動的に収集して、キーワードとの適合度を評価する」仕組みを理解して貰えずに困ったこともあります。
技術面でも未熟なところがありましたね。当時の検索エンジンで「京都」を検索すると、「京都」と「東京都」がヒットしていました。infoseek Japanは日本で初めて「日本語解析」を加えることで、東京都と京都を分離して検索できるようになりました。
infoseek Japanは、日本のインターネットビジネス・テクノロジーと共に成長してきたのではないでしょうか。

―― infoseek Japanを今から振り返り、どう評価されますか?

検索エンジンの登場で、ウェブ広告に新しい評価軸ができたと思います。インプレッション数を目的にした広告だけでなく、クリック率を中心に効率を重視した広告の登場です。Google AdWordsのようなコンテンツマッチ広告は、この延長上にありますよね。「必要とする人に必要な広告を届ける」、広告の理想に一歩近づけたのではないでしょうか。
事業面では、infoseek Japanは僕の手を離れて、楽天市場のグループの一員として成長を続けています。世界ではinfoseekが買収され名前が変わり、時代に翻弄されて消滅して行きました。そんな中、いまだに日本でトップ5に入るポータルサイトであり続けているのは「成功」と評価して良いと思います。
今から振り返ると、時代がロボット検索エンジンに不利に働いたのかもしれません。今でこそ、ウェブログなどの発達で個人の面白いコンテンツがたくさん生まれています。しかし、infoseek Japanを立ち上げた頃は秀逸な個人のコンテンツは少なく、メディアのページが人気を集めていましたから。
あとは、ポータル化に費やした開発資源や資金をすべて検索に回していたら、Googleに匹敵する独自の検索エンジンを構築できていたかもしれませんね。

―― infoseek Japanを離れ、興味のあるサービスを教えてください。

今はウェブログが非常にホットですね。ウェブを使えば個人が発言できると言われていました。ウェブログは技術的な敷居を下げ、ブラウザから手軽に発言できる点が面白い。さらに、TrackBackを通じて個人の意見が展開して行く様子を追える。「お金を払ってでもコンテンツを見てもらいたい」、そう思うアマチュアのコンテンツ革命が起きていると実感できます。
ウェブログは技術的にもホットです。たとえばRSSを使った更新情報の取得など、サーバ間通信を意識せずにXML技術を利用できている。技術を意識せずに個人のコンテンツが広がりを持つ。ゲームのような中毒性がありますね。
ウェブログの影響は、ビジネスや広告にも現れると思います。これから個人間の情報流通が活発になり、「広告のウソ」が通じにくくなりますよね。自社製品の都合の悪いところは、買ったユーザのレビューを中心にインターネットに広まってしまう。いくら広告を打っても、買った人の意見を中心に広がった評判は変えられないでしょう。これからは企業がもっとユーザと対話する必要が出てくると思いますよ。
広告をメディアに打つより、製品開発にコストを掛ける。マーケティングや開発の人とユーザが対話するためにコストを掛ける。このように、プロモーションのあり方も変わって行くのではないでしょうか。
検索エンジンの発達で、ウェブから情報を引き出す手段は整備されました。次は、眠っているユーザのナレッジをウェブに公開するサービスが大きく発達するでしょう。私はウェブログが大きな役割を担うと思っています。

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