Web人大賞

高橋 理

株式会社ナイキジャパン マーケティング本部 ウェブマスター

nike.jpの企画/運営


クリエイターとのコラボレーションが生み出す最高のブランド体験

斬新なサイトが先端の商品を象徴する

日本でインターネットブームが起こった2000年、多くの企業が自社サイトを持った。このときタブーとされたのが、FLASHと画像を多用する「重い」サイトだ。しかし、デザインと斬新さにこだわったナイキは、2000年の回線事情を無視してまでFLASHを全面的に導入。結果として、ナイキはウェブブランディングの手本としてウェブ広告業界でも高い評価を得るようになった。当時の企業サイトは、広告部門や広報部門が手がけることが多かったが、ナイキは社内公募でモチベーションの高いウェブ専任チームを編成。専任チームは、日本最高のブランドサイトを目標に掲げた。

―― nike.jpを立ち上げたきっかけは?

社内公募でウェブ専任チームの公募があり応募したのがきっかけです。サイトの立ち上げは2000年7月19日、「719」(ナイキ)の語呂合わせでオープンしました。この時期にサイトを持った企業が多かったと記憶しています。応募者の中から私と三輪、久保田の3人がウェブ専任チームに選ばれて、ナイキのブランドサイト構築が始まりました。
サイトを作る前に「日本一のブランドサイトを作る」と目標を決めました。どういう日本一かは決めませんでしたが、この目標が今の「nike.jp」を作り上げたと言っても過言ではありません。
まもなくプロジェクトチーム用の部屋が用意されて、新品のMacintoshやソフトが置かれていました。正直に言うと、Macintoshもクリエイティブ用のソフトも未知の世界でした。すべてが勉強で、何をするにも時間がかかります。気が付くと午前2時を回っていて、ウェブチーム以外は誰も残っていない事もたびたびありました。
ウェブを調べてゆくうちマクロメディアのFLASHを知りました。HTMLに比べて格段に高い表現力を持つFLASHは、ブランドサイトを作る上で魅力的に感じましたね。

―― nike.jpの企画や位置づけは、どのように決まったのでしょうか?

最初にコンテンツの柱を決めました。ナイキの一番大切なモノ、つまり商品をお客様に伝えることですから、商品のリストを載せることにしました。次に、ショップのプロモーションが必要です。買えるお店のリストも決まりました。サイト上の商品販売も企画しました。
コンテンツの柱が決まり、サイトデザインに関してクリエイターと話を続けました。あまり弊社でデザインの枠などを決めずに、クリエイターに自由に表現してもらうようにしました。当時の通信速度やファイル容量などの制限も外して、新しい、そして最高のクリエイティブを期待したのです。
なぜなら「ブランドサイト」であるなら、ブランドの姿勢をサイトそのもので示すべきですよね。良い意味で攻撃的に挑戦し続けるのが「ナイキ」であり、商品では先進性で、サイトではデザインでナイキを表現しているのです。斬新な表現手法を用いることで、商品の先進性を象徴させる。革新的な商品を斬新に見せることで、お客様に商品を正しく理解して頂く、これが弊社のサイトの位置づけです。

――それが業界をリードする表現手法を生み出したんですね。

先進性をアピールする上でFLASHの利用は欠かせない。しかし、当時はFLASHを全面的に採用した企業サイトは珍しかったと思います。ユーザの回線速度が遅くPCの性能も低い時代でしたから、FLASHに否定的な企業がほとんどでした。クリエイターからも「ホントにFALSH使うんですか?」と確認されたぐらいです。
当時でもFLASHの表現力はケタ違いで、私たちが表現したいモノの最低限のラインがFLASHでした。「プラグインが無いなら入れてアクセスしてください。そうすれば“ナイキ”を体験して頂けます」、これぐらいの腹づもりでサイトを作りました。
おかげさまで、コンセプトやクリエイティブの社内外の評価は上々でした。「重さ」を除いて、ですが。お客様からも「綺麗で凄いサイトだが重い」と言われ続けてきました。もっとも、最初は「動いた!」と、FLASHのムービーだけで驚かれることもありましたけどね(笑)。
ようやく日本にもブロードバンドが浸透して、弊社のサイトもそれほど待たずにご覧いただけるようになりました。最初からクリエイティブに妥協しなかった結果、強力なブランドサイトを維持できたのではないかと自負しています。

――強力なブランドサイトを作り上げるには。

nike.jpは、紙媒体やテレビの補完的なメディアではなく、ナイキブランドを消費者に伝えるメディアのひとつと捉えています。といって、テレビウェブでは見ているユーザ層が違いますし、マスの度合いも異なります。しかし、弊社にはどちらも無くてはならない媒体です。サイトを立ち上げた当初はショールーム的な捉え方もされましたが、現在はお客様にメッセージを届けるチャネルとして認知されてきました。
nike.jpはナイキファンが集うところで、弊社からお客様にも、お客様から弊社にも能動的なメディアです。テレビCMを見たお客様が、CMの出演者などを知るためにnike.jpにアクセスする。すると、企業サイトとしては予想外の構成に驚き、ナイキの「ブランド体験」をして頂く。
そのために、妥協できないラインをどこに設定するか。ブランド力を信じ、見合うコンテンツを提供するなら、ある程度高いラインを設定してもお客様に支持されます。この挑戦がブランド力を高めているのではないでしょうか。もちろん弊社の挑戦も、クリエイターの皆様の協力あってのことです。特に、ルートコミュニケーションの寺島さんは立ち上げからお世話になっています。クリエイターの皆さまや、少々重くても支持してくださったお客様に感謝いたしております。

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