Web人賞

小川 仁

株式会社キャスティ チーフプロデューサー コンテンツ戦略室長

ひかり荘


FTTH時代のコミュニケーションを先取りする

出演者を集め、高画質のストリーム画像を通してコミュニケーションを取らせる「ひかり荘」。コンテンツ制作者の誰もが作りたいと思いながらも、さまざまな制約により断念せざるを得なかったコンテンツだ。FTTH時代のコミュニケーションとはどういった物か。キャスティの小川仁はひかり荘を皮切りに、さまざまなモデルケースを提案することで「ブロードバンドコンテンツ」と違った切り口の魅力を引き出そうとしている。

――ひかり荘を始めたきっかけは

まず、東京電力と吉本興業が「FTTHならでは」というコンテンツを求めて、お互いに出資して会社を作ったのがきっかけです。「光ファイバのコンテンツをどないしよ」という事ですね。
ボクなりに考えた結果、普通に映像を見せるだけなら既存のメディアの方が完成度が高くて便利なんですよ。映画を見るなら、映画館に行くか、テレビで放映するのを待つか、DVDを買うか借りるかすれば良いわけです。
ブロードバンド、特に光ファイバの良さが分かるコンテンツをずっと考えたんですが、結論としては「そんなもん、あるかいな」と。そこで、思いついた中でウケそうなコンテンツをやろうと決めたんです。
もう一つ、気に入らないことがありまして。いわゆる「ブロードバンドコンテンツ」ですが、正直「ショボいなぁ」と思いません?なんか、コマ送りの汚い動画に工夫のない画面構図、こりゃ流行るわけないですわ。あとは映画の予告編ぐらいで、パソコンで苦労してクリックして、小さい画面が表示される。しかも見れるのは予告だけ。こんなもん、ボクはいりません。

――では、ブロードバンドコンテンツの正しい方向性は

インターネットの良さはコミュニケーションが手軽に取れることですよね。パソコンも携帯電話も、メールでいろいろコミュニケーションを楽しめるんです。
あと表現したい人って、意外に多いんですよ。そこで、光ファイバを使って表現できる場を作ろうと思ったんです。ただ表現するだけじゃなくて、面白い人、いい物を持っている人をきちんとフォーカスして目立たせる仕組みを持った、表現できる場。それが「ひかり荘」なんです。
うんうん唸りながら考えていたんですが、「ひかり荘」というコンテンツを通して、未来のコミュニケーションのあり方を提案するコンセプトが固まりました。さらに、既存メディアの映像コンテンツの演出力を活かしつつ、一方ではパッと見でショボいかもしれないけど、個人でも手軽に映像による情報発信をできる見せ方を提案して、映像コミュニケーションにもっとも適した見せ方を追求しているんです。意図のあるショボさを追求したいと考えたわけですね。

――そこで、ひかり荘を始めたんですね

ひかり荘はユーザにも、芸人にも、素人さんにも、そして我々にも学習の場でもあるんです。光ファイバが津々浦々まで引かれた時代のことなんて、誰にも分かりませんよね。
だから、台本も何も無し。出てくる人には好きにコンテンツを作らせています。
当たり前なんですが、見ている人の方が圧倒的に数が多い。見ている人の一人あたりの暇な時間はちょびっとでも、つなぎ合わせるとほぼ24時間カバーしてしまうんですね。「○時○分、庭にカラスが来た」とか書き込む人がいて、出演者がそれに反応するんですが。それに何の意味があるのかと言われると、何も意味は無いと思う。
映像の意味は、製作サイドでは持たせていませんよ。何を意味する映像なのか、何を伝えたいのか。これは、ユーザがコミュニケーションを取りながら決めることです。ここがテレビと決定的に違う点ですね。
もちろん、荒らされることもあります。でも「荒らす」というのもリアクションの一つなんですよ。まったくスルーされてしまうより、リアクションが合った方がいいわけじゃないですか。ボクは、荒らしという大きなエネルギーを正しい方向に導いて行けるシステムなりコンテンツなりがあればいいなぁと思ってます。

――ひかり荘のこれからは

ボクのポリシーでもあるのですが、コミュニケーションは対等じゃなきゃいけません。片方が多くの情報を握っている、これは対等じゃありませんよね。 ADSLでは上りと下りの回線が非対称です。映像の情報量という意味でも、本当に対等なコミュニケーションが取れるのはFTTHです。
ひかり荘をやるからには、ユーザに「夢を与えたい」と思っています。まだまだ埋もれている「おもろいもの」を表舞台に引っ張ってきてあげたいんですわ。オーディションやらと比べると、ひかり荘の方が残酷な面もあります。つまらない芸には「つまらない」と直接感想が飛んでくるんですから。でも、それを乗り越えて新しい自分を発見したり、自分の夢を実現できたりしたら素敵ですよね。
(小林慎太郎/山本浩司)

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