Web人賞

杉原 均

日本航空株式会社 旅客IT推進室課長補佐

JAL e-style


お客さまとともに進化しつづけるeコマースサイトでありたい

リアルビジネスとeビジネスの融合。多くの企業が課題として捉えながらも、双方を融合させたビジネスモデルの構築に苦心している。そんな中、リアルと “e”の融合に成功したのが日本航空(JAL)のWeb予約&チケットレスシステムだ。航空券の予約をWebから行い、空港に設置されたセルフチェックイン機にクレジットカードを入れると航空券が発券される。Web予約とチケットレスは「一度使うと手放せなくなるほど便利」と評されるサービスだ。このサービスの実現には、従来の基幹システムとWeb系との接続が必須だが、予約システムを構築した中心人物が旅客IT推進室の杉原均だ。

――JALがWeb予約を手がけた経緯をお聞かせ願えますか

まずWeb予約をはじめとしたeビジネスの前段階として、Webでの広報活動があります。弊社は1995年よりJALの先進性をアピールすることを目的に、Webを使って情報発信していました。いわばeビジネスへの“離陸準備”をしていた状態ですね。実は同時期に、弊社は米国でのWeb予約サービスを開始していました。さらに1996年7月に、国内航空会社では初めてWeb予約を可能にしていました。アメリカの航空会社でもWeb予約が盛り上がりを見せ始め、日本でも「eクリスマス」といった単語が世間をにぎわせていた頃です。
このように、JALは早くからeビジネスに乗り出していたのですが、本格的なeビジネスとして飛び立つのは、周辺システムとの融合を待ってからなります。
まず「チケットレス」という仕組みとの融合が図られました。当時のチケットレスは電話予約でしたが、Webで予約した航空券をチケットレスで受け取れたら便利ですよね。お客様がWebで予約をして、空港の「セルフチェックインマシン」で実際のチケットを受け取る。チケットを電子化するコンセプトは、Web を使った「eビジネス」と、とても直感的に繋がります。航空券の予約という分野でも、インターネットがライフスタイルに溶け込んでいくと確信できました。
次に、会員組織を「JALマイレージバンク」へ一本化したことが挙げられます。当時は、インターネット会員という考え方が盛んで、一般会員様とインターネット会員様を別にしたシステムでした。それではコアビジネスにならないとの判断から、1999年9月にJALの顧客会員組織を「JALマイレージバンク」一本化しました。JALマイレージバンクはオンライン入会を可能にして、Webからもマイルの参照をできるようにしました。現在JALマイレージバンク会員は1,500万人ものお客様にご利用頂いております。
最後に、運賃が柔軟に設定できるようになったことも理由に挙げられますね。Web予約をご利用されるお客様に対して「e割」というインターネット割引を導入しました。
インターネット利用の増加、Webでの情報発信の定着や、JALマイレージバンク会員へのボーナスマイル、運賃の柔軟な設定といった要因が出そろい、現在のWeb予約のような本格的なeビジネスを展開できるようなったのです。

――Webと既存の予約システムの接続はいつ頃に決定したのですか

国内線は1996年の7月、国際線は1997年の1月です。当初は、ネットの広がりの可能性は感じていましたが、半信半疑でした。数年後には本格的なビジネスとして意識するようになったのですが、最初はサービスの紹介を中心に予約のみ提供していました。最終的にチケットを販売するようになりましたけどね。
もちろん、eビジネスは弊社とお客さまが直接繋がるダイレクトマーケティングですので、これまでよりお客様のことを知らないと成長できません。当初は、時期を限定してキャンペーン的に「e割」をお客様にご提案させて頂きましたが、実際の反響がずっと大きく驚きました。Webから予約だけでなく決済までできるeビジネスを用意するなど、お客様の要望より先回りしてサービスを提案、お客様のメリットを追求した結果かと思います。おかげさまで、現在のJALの国内線は個人旅客の約40%がWebで予約して搭乗されています。

――Web予約システムが稼働するまで紆余曲折があったと思いますが

大きく変化したのはデザインでしょうか。第一世代のWeb予約システムは、弊社のオペレータ向け画面を基本にしていました。でも、お客様の視点からすれば飛行機の座席表を見ながら予約したい。予約という機能だけ見れば、座席表があってもそんなに大きなメリットではないかもしれません。でも、座席表を見ながら予約した方が楽しいですよね。
Web予約システムを作った当初は、コアなインターネット利用者がシンプルな画面で手早く予約できる物でした。ところが徐々にインターネットユーザーが増え、JALをご利用頂くお客様が増えてくるにつれ、「それではちょっと」となってきました。お客様が使いたいインタフェースを可能な限り用意して、お客様の好みで選んで頂く。セルフサービスの原点に立ち返ったわけです。
しかし、徐々にサイトが充実してゆくと、レスポンスの悪いコンテンツが増えてきました。コンテンツの容量とWebサーバの規模が合っていなかったんですね。徐々にお客様から「遅くて使い物にならない」とお叱りを頂くようになってきてしまったんです。
そこで、コンテンツとシステムのバランスを直して、快適なレスポンスが得られるようにしました。作る側としてはたくさんPRしたいと思うのは当然ですが、お客様に支持されなくなってしまっては本末転倒です。予約系サービスは反応が遅いと話になりませんから、今でもレスポンスを最重視しています。

――これからは企業はWebをどう活用すべきでしょう

日本の企業はまだWebの可能性を活かしきれていませんね。もっと自社サービスとeビジネスを融合させる手法があるはずですが、実際にeビジネスに乗り出して生産性のアップに成功している企業は少ないと思いますよ。
もちろんJALとしても、Webでできることがたくさんあると思います。たとえば、お客様の許可を得た上で、お客様のフライト履歴などを利用した「提案システム」を作ってみたいですね。南の島に多くフライトされるお客様には、ちょっと変わった島をご紹介したり、窓際を好まれるお客様には、初めから窓際の席をご提案したり。会員番号さえ入れれば、お客様の好みや行動をすべて承知した上で、お客様のフライトを心地よくアシストする、そんなシステムです。セキュリティー管理もとても重要になると考えています。
事業という視点で見ると、JALがeビジネスでトップに立つこと、これが目標です。お客様のライフスタイルを提案できるようシステムを充実させます。
最後に、私はシステム面を担当していますが、チーム全体を引っ張ってきたeビジネス推進チームの西畑智博氏がこのプロジェクトで重要な人物です。eビジネス予約システムの今日があるのは、彼と早い段階からチームとして組織横断的に一丸となって取り組んできたメンバー全員の成果だと思っています。
(小林慎太郎/山本浩司)

PAGE TOP