Web人大賞

小川 雅章

キリンビバレッジ株式会社 営業本部営業部 営業企画担当 部長代理

ネットでFIRE


自分が欲しいと思えるプロモーションを愚直に企画し続けよ

多くの商品に付いてくる「キャンペーン応募シール」。これまでは、シールを集めて専用ハガキで応募する手法が主流だった。ところが、「あるプロモーション」を境に応募シールのURLにアクセスしてキャンペーンに応募する手法に主流が移りつつある。そのプロモーションは、キリンビバレッジが2001年3月1日から展開した「ネットでFIRE」。プロモーションの分野でIT革命をもたらした「ネットでFIRE」は、商品プロモーションの分野に衝撃と驚きを持って迎えられ、現在でもプロモーションの成功例として多くのマーケッターから研究対象とされている。「ネットで FIRE」を立ち上げ、最後まで遂行したのが、キリンビバレッジ株式会社・営業本部営業部の小川雅章だ。

――ネットでFIREを思いついたきっかけは

当時はシールを集めてハガキに貼って応募するプロモーションが全盛期を迎えていました。同じセグメントの商品では、当然ながらプロモーションを打つ時期が似通ってきます。広告に多額の費用をかけて、プレゼントを豪華にすれば数字は稼げますが、この手法も市場から飽きられてきていました。
弊社でも「缶コーヒーは基盤商品、FIREのプロモーションを何とかしろ!」と檄が飛び交う状態でした。しかし、社内的には「市場に埋もれてしまうプロモーションなどやめてしまえ」と過激な意見まで噴出するほど効果が疑問視されていました。社外的には、競合他社が巨大なプロモーションを打ち続ける中で、当社のハガキ系プロモーションの応募が落ちているデータが明らかになっていました。
もう、全面的にプロモーションを見直す必要に迫られていたんです。「競合他社に勝てるキャンペーンを打て! 手法は問わない」と社命が下り、何とかしなければと思っていたところ、普段使っているインターネットが目にとまりました。
FIREの主要な購入層を調べてみると、20~30代の男性なんです。これはインターネットのユーザ層とぴったり合致する。そこで、何とかして競合と差別化が図れる、新しいキャンペーンの企画のため、ネットに特化したプロモーション案を完成させ、稟議にあげました。 会社の方針にも助けられましたよ。「新しい仕組みへのチャレンジだから、失敗は気にせずベストを尽くせ!」と激励され、のびのびと企画を立てることができました。

――ネットを使った前人未踏の大型プロモーション、企画や制作にあてた期間はどのぐらいですか?

誰もやったことが無かったことですから、検討に検討を重ね約半年かかりました。課題をリストアップしたところ、クリティカルな物が山ほど見つかりました。たとえばキャンペーンのURL告知では、PCと携帯3キャリア向けの4つのURLをPOPでどう表現するか悩みました。POPのスペースは限られていますし、これはURLを一本化するしかなく、アクセス端末をどう判定するか新たな課題が生まれました。このように、1つずつクリアしてゆくしかなかったのです。
さらに、初めてでしたので応募数の予測ができません。例年の販売本数から推測して、サーバ環境を整えたのですが、プロモーションが大当たりすれば、販売本数は簡単に変わってしまいます。そこで、ある程度のトラブルやアクシデントは覚悟していました。
不安ながらスタートしたところ、システムの予想をはるかに上回るアクセスがきてしまいました。「うれしい悲鳴」と言いたいところですが、システムダウンはあってはならないことです。応募するために商品をご購入して頂いているわけですから。

――アイデアマンですね、変わった経験でも?

入社後ルートセールスを担当、その後量販店や特販部署で営業を経験した後、販促部門に移りました。その部署はキリングループに対する販促活動が中心で、 12年在籍しました。当時のプロモーションは店頭でのPOPが中心で、目を引くPOPは片っ端からチェックしました。生活空間にPOPがあふれていますよね。24時間すべてが仕事に直結する時間と捉えていました。企画を考え、売り込むノウハウを覚えたのはここでの経験ですね。
ここで、徹底して「お客様の視点」でプロモーションを見るように心がけました。自分の目がとまったPOPは何か、自分が欲しいと思った他社プロモーションは何か、いつも研究していましたよ。今でも流行のスポットにはいち早く通います。バランス感覚を養うために、努めていろいろな場所に足を運んでいますよ。
プロモーションを提案する側とされる側、両方を経験した事が、「ネットでFIRE」につながったと思います。

――結果を振り返ると「ネットでFIRE」は大成功、プロモーション史に残るプロジェクトとして研究対象にもされていますよね。

おかげさまで、「ネットでFIRE」は予想を上回るパフォーマンスをあげました。続くネットプロモーションもご好評いただいています。業界からは「すごいキャンペーン」との評価を頂くこともあります。私の経験から、これからプロモーションを担当する若い企画者にアドバイスを差し上げたい。
まず、「通すための企画」を作ってはいけない。前例のあるプロモーションをちょっと手直しして、事前に根回しをしておけば「通すための企画」は簡単に作れます。しかし、そんな企画を作っても誰の得にもならないし、自分の首を絞めることになる。自分やお客様が「欲しい!」「買いたい!」と思ってくださるプロモーションを考える事に時間を費やして欲しい。
それから、新しいプロモーションを考えると様々な横やりが入るでしょう。失敗を恐れず、自信を持ってお客様に提案できるプロモーションを考えて欲しい。
上司と意見が異なったら、時間をかけてでも自分の考えを説明して欲しい。そうすれば、プラスになるアドバイスをくれるはずです。苦労したりつらい思いをした分、終わったときの喜びが大きくなりますよ。
一緒に頑張ったスタッフへの感謝も忘れてはいけません。「ネットでFIRE」キャンペーンの終了時間と同時に、スタッフに「お疲れ様でした、本当にありがとう」と感謝のメールを送ろうと考え実行しました。後で、スタッフが大感激してくれたと聞きました。プロジェクトを動かすのは機械ではなく人です。スタッフと信頼関係を結べなければ成功はあり得ません。
「ネットでFIRE」を投げ出さずに遂行できたのは、上司の励ましもありました。「ネットでFIRE」を成功させれば、プロモーションの歴史が変わる。歴史を変えるチャンスだぞ」と励ましがなかったら、途中で投げ出していたかもしれません。さらに、企画会社と大まかな枠組みを考え、一つずつアイディアを具体化させました。初対面で取り組む大きな仕事にもかかわらず、スタッフの皆さんが親身になってくれ、チーム一丸で目標に向かってゆきましたね。「前例のないプロモーション作戦を成功させる!」と。この場を借りて、お礼を申し上げたいです。
(小林慎太郎/山本浩司)

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